真木柱 その四十四

 髭黒の大将の妹である東宮の母女御も、いかにもきらびやかな装いを凝らして、東宮はまだ十二歳の幼年でいるが、そのあたりはすべてが当世風に華美に見られた。


 男踏歌の一行は、帝の前から秋好む中宮のほうへ、そこから朱雀院へと廻っているうちに、夜も更けてきたので六条の院では、今年は仰々しいからと辞退した。


 踏歌の一行は朱雀院から宮中に帰ってきて、東宮御所などを廻っているうちに、夜が明けた。ほのぼのと白んだ美しい朝ぼらけに、ひどく乱酔したさまで、みんなで催馬楽の「竹河」を謡っている。見ると、右大臣の若君たちが四、五人ほどいて、殿上人の中でもとりわけ声がよく、容姿もすっきりとして、人々の中にうちつづいているのが、ほんとうにすばらしく見事だった。


 とりわけ殿上童の八郎君は本妻腹で、右大臣がとても大切にしている。実になんとも言えず可愛らしく、髭黒の大将の太郎君と並んでいるのを、玉鬘も今では実の弟と承知なのでつい目がとまるのだった。

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