藤袴 その二十

 宰相の君が、



「今までは、お手紙がどういう意味のものであるとも玉鬘様にはお分かりにならなかったようでございます。何事につけても、ひどく世間へ気がねをなさりすぎるようなので、親しくお話もお出来にならなかったのでございます。これからは、自然こんなふうばかりではすまされなくなりましょう」



 と、とりなして言う。確かにもっともなことなので、



「わかりました。あまり長居をしますのもよくないようです。そのうちだんだんとご奉仕してから、親しく精勤させていただきましょう」



 と言って立った。


 月が澄み渡りながら高く上り、月光に照らされた空の気色も、はなやかで情趣深く見える。その中に立った柏木の中将は、とても上品で美しい顔立ちをして、直衣姿も華やかで魅力があり、なかなか風情をたたえている。夕霧の中将の風采や雰囲気には、とても及ばないが、この人もすばらしく魅力的だった。どうしてこの人たちはそろって立派なのだろうと、若い女房たちはいつもながら、それほどでもないことまで、大げさに褒め合っているのだった。

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