藤袴 その十五
こうして喪服を脱ぎ、月が改まって九月になると悪い月に当たるので、玉鬘の参内は十月ごろにと、光源氏は帝に言った。帝はその日を待ち遠しく思う。
一方、これまで玉鬘に思いを寄せていた人々は、誰も皆とても残念がり、参内する前に何とかしたいものと、それぞれ味方に取り込んでいる女房たちを責めたてて、せがむが、古歌にあるように、吉野の滝を手で堰き止めるより難しいことなので、
「ほんとうに、どうしようもございません」
と、誰も答えるのだった。
夕霧も、言わなくてもいいことをなまじ打ち明けてしまい、玉鬘がどう思っているのかと、気が揉めてたまらないので、何かと駆けまわって、さも親切にあれこれ雑事のお世話をしているといったふうにみせて、玉鬘の機嫌を取っている。そうたやすく口に出して軽々しく言い寄るようなことはせず、さりげなく恋心を抑え鎮めているのだった。
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