藤袴 その十六
実の兄弟の人々は、こちらへ遠慮して近づくこともせず、参内するときにお世話しようと、それぞれその日を待ちかねている。
柏木の頭の中将は、あんなに心の限り恋焦がれて、辛い思いを訴えていたのに、その後ぱったり音沙汰なくなったのを、
「なんて露骨ななさりようだ」
と、女房たちはおかしがっていたところへ、今夜は内大臣の使いとして、その当人が来た。
今でもまだ、表向きには実の姉弟という態度はせず、ひそかに手紙のやり取りなどしていた名残で、月の明るいこの夜、庭の桂の木陰に隠れてそっと立っていた。玉鬘もこれまでは一切取りあおうとしなかったのに、すっかり扱いが変わって、南の御簾の前に通す。それでも取次なしの話はやはり決まりが悪いので、女房の宰相の君を通して返事をさせるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます