藤袴 その十六

 実の兄弟の人々は、こちらへ遠慮して近づくこともせず、参内するときにお世話しようと、それぞれその日を待ちかねている。


 柏木の頭の中将は、あんなに心の限り恋焦がれて、辛い思いを訴えていたのに、その後ぱったり音沙汰なくなったのを、



「なんて露骨ななさりようだ」



 と、女房たちはおかしがっていたところへ、今夜は内大臣の使いとして、その当人が来た。


 今でもまだ、表向きには実の姉弟という態度はせず、ひそかに手紙のやり取りなどしていた名残で、月の明るいこの夜、庭の桂の木陰に隠れてそっと立っていた。玉鬘もこれまでは一切取りあおうとしなかったのに、すっかり扱いが変わって、南の御簾の前に通す。それでも取次なしの話はやはり決まりが悪いので、女房の宰相の君を通して返事をさせるのだった。

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