行幸 その四十六

 ことあるごとに、



「尚侍に私をお願いしてください」



 と、うるさく催促するので、弘徽殿の女御もあきれ果てて、いったいどんなつもりでこんなことを言っているのかと思い、何も言わないのだった。


 内大臣は、近江の君のこの大望を聞くと、からからと大笑いして、弘徽殿の女御の御殿に参上するついでに、



「どこにいる。近江の君、ここへ来なさい」



 と呼んだ。



「はあい」



 と、はしたないほどはっきりと返事をして、近江の君が出てきた。



「ほんとうによく勤めている様子だが、これなら朝廷の役人になってもいかにも適任だろう。尚侍の件は、どうして私に早く言ってくれなかったのかね」



 と、真面目くさった顔つきで言うのだった

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