行幸 その四十三
しばらくは世間の噂にならないようにと、このことは努めて隠していたが、口さがないのは世間の常だ。自然に話がもれ伝わって、だんだん評判になってきたのを、あのどうしようもない近江の君が耳にしてしまった。弘徽殿の女御の前に、柏木の中将や弁の少将が伺候しているところへ、近江の君が現われて、
「内大臣はまた姫君がお出来になったとか。何とまあ、すばらしいこと。どんなお方が、二人の大臣にちやほやされているのかしら。噂に聞けば、その人だって、身分の低い女が生んだというじゃないの」
と、浅はかに言うので、弘徽殿の女御は聞き苦しく思い、ものも言わない。柏木の中将が、
「あちらの姫君は、お二方からそのように大事にされるだけのわけがおありなのでしょう。それにしても、誰に訊いたことを、こんなふうにだしぬけに口になさるのですか。口うるさい女房などが聞きつけたら困るじゃありませんか」
と言うのだった。
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