行幸 その三十九
玉鬘はほんとうに気後れするほどすばらしい風采の大臣が、二人もそろっているので、気恥ずかしさのあまり、とても返歌はできない。そこで光源氏が代わって、
よるべなみかかる渚にうち寄せて
海人もたづねぬ藻屑とぞ見し
「ほんとうにご無理な、思いがけないお恨み事です」
と言うと、内大臣は、
「確かにごもっともです」
と、それ以上は言う言葉もなくて、御簾の外に出ていった。
親王たちをはじめ、次々に、残らず人々が集まった。その中には玉鬘に想いを寄せている人々もたくさんいるので、内大臣が御簾の中に入ったまま、いつまでも出てこないのを、いったいどうしたのかと怪しんでいる。内大臣の子息たちの中で、長男の柏木の中将や、次男の弁の君だけは、うすうす事情を知っていた。ひそかに玉鬘を慕っていたのに、実の姉とわかって、恋の対象にならないのがつらいとも、美しい姉ができてうれしいとも思うのだった。
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