行幸 その十三
大宮は、
「老衰の病とわかっているのですが、病気のまま幾月も過ぎ、今年になりましてからは、いよいよ回復もおぼつかないように思われますので、もう一度こうしてお目にかかり、お話する機会もなくて終わるのかと、心細く思っておりました。それなのにこうしていらしてくださって、今日という日でまた少し、寿命が延びた気がいたします。今はもう死んでも惜しいような年でもございません。頼みにする夫や娘にも先立たれ、年老いて一人生き残っている例を見るのは、人のことでもほんとうに嫌なことだと感じておりましたから、あの世への旅立ちの支度に、自然に気が急かされてならないのです。この夕霧がほんとうに真心こめて不思議なほど世話をしてやさしく心配してくれるのをみるにつけても、いろいろと想いが残って、今まで生きながらえているのでございます」
とただもう泣きに泣いて、震え声になるのも愚かしくみっともない感じがするが、それも無理からぬことなので、ほんとうに気の毒に思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます