行幸 その十二

 光源氏は太政大臣となった今は、以前にもましてつとめてひっそりと忍び出かけても、どうしても行幸に劣らないほど万事がいかめしくなる。容姿はますます美しさが増すばかりで、この世のものとも思われない。


 久々に珍しく目にかかった大宮は気分の悪さもすっかり拭い去ったようで、起きて座っていた。脇息に寄り掛かって、弱弱しそうに見えるが、話などはよくした。光源氏が、




「それほどお悪くはいらっしゃらないのに、あの夕霧が慌てふためいて大げさに悲しみますので、どんなにお悪いのかと心配申し上げておりました。近頃は宮中などにも、特別なことでもない限り参上もいたしませず、朝廷にお仕えするものらしくもなく邸に引きこもっておりますので、万事に勝手がわからなくなって、何かと億劫になってしまいました。私より年輩の人が、腰が折れ曲がるほどまでに年老いて出仕しているような例が、昔も今もあるようですが、私は生まれつきよくよく愚かな性分な上に、さらに無精者ときているのでしょう」



 などと話すのだった。

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