行幸

行幸 その一

 光源氏はこのように玉鬘のためには、すみずみまで心遣いをして、玉鬘の将来のために何といい道はないものかと、あれこれ思案するが、心の底には玉鬘の恋慕が<音無しの滝>のように流れている。玉鬘にはそれが厭わしく気の毒なことだった。これでは紫の上の推量通りに、身分にふさわしくない軽々しい浮き名も流れそうだった。



「あの内大臣は、何事につけても、けじめをはっきりさせ、少しでも曖昧なことは、そのままでは我慢がお出来にならないといった性分なので、もしこういうことを知ったら、それこそ世間のもの笑いにもなるだろう」



 などと、光源氏は反省していた。


 その年の十二月に、大原野へ行幸があるというので、世間では一人残らずそれを見物しようと大騒ぎしている。六条の院からも女君たちが、牛車を連ねて見物に出かけるのだった。

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