常夏 その八
夕霧は、こうした立派な方々の中でも、際立って優雅な美しい姿だった。
「夕霧をお嫌いになるとは、内大臣も心外な人だ。御一族が藤原氏だけで他氏も入れず輝かしくときめいていらっしゃるところへ、こちらが皇族の血筋なので、偏屈にでも思っていられるのだろうか」
と、言うと、玉鬘は、
「<大君来ませ婿にせむ>と、催馬楽にもございましたのに」
と言う。光源氏は、
「いや、その催馬楽の文句にもあるように、<御肴に何よけむ>などと、あれこれ派手に手厚くもてなされたいとは思っていないのです。ただ幼いものどうしが約束しあったその思いも遂げられず、長い年月ふたりの仲を裂いている内大臣のお気持ちが情けないのです。夕霧の身分がまだ低くて、世間の聞こえも軽々しいと思われるなら、素知らぬ顔して、万事私にお任せになったら、ご心配をおかけするはずもないのに」
などと嘆息した。玉鬘は、それを聞いて、さては二人の大臣の間は、そうした事情があってしっくりしていない仲だったのかとわかった。それは実の父に自分のことを知ってもらえるのは、いつのことかと、身にしみて情けなくなるのだった。
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