蛍 その三十

 西の対の玉鬘の様子を、内大臣の長男の柏木の中将はとても深く心にかけて、言い寄るために仲立ちにした女童女のみるこも頼りないので、この中将の君に泣きついたが、



「他人のこととなると、恋愛沙汰などは、つい悪口を言いたくなるものですよ」



 と、素っ気ない返事をするのだった。この二人は昔父の大臣たちの間柄に似ている。


 内大臣は、北の方はじめ多くの婦人たちにそれぞれ子供たちが大勢生まれた。その母方の声望や、本人の人柄に応じて、また内大臣の何事も思うままになる名声や威勢によって、皆ひとかどの地位につけていた。


 娘はそう多くいないのに、弘徽殿の女御も中宮にとあれほど期待していたところが、秋好む中宮に先を越されて、雲居の雁の姫君も、東宮妃にと目論んでいたのに、ああして思い通りにならない有様なので、とても口惜しがっているのだった。

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