蛍 その七
何やかやと兵部卿の宮の話が長く続くのに、返事もしないで、玉鬘は思いためらっている。そこへ光源氏が近寄ってくるなり、几帳の帷子を一枚、いきなり上げた。と、同時に、さっと光るものがあたりに散乱して、紙燭を差し出したのかと、玉鬘はびっくりした。
この夕方、光源氏は蛍をたくさん薄い布に包んでおいて、光が洩れないように隠しておいたものを、さりげなく、玉鬘のお世話をするふりをよそおって、いきなり、さっと放し撒いたのだ。突然きらめく光に、玉鬘ははっと驚き、慌てて扇をかざして隠した横顔は、息を呑むほど妖しく美しく心をそそられた。光源氏は、
「おびただしい光が突然見えたら、兵部卿の宮もお覗きになられるだろう。玉鬘の姫君をこの私の実の娘とお思いになっているだけで、こうまで熱心に言い寄られるのだろう。玉鬘の人柄や器量などが、これほど非の打ちどころもなく具わっていようとは、とても想像もできまい。実際、色ごとには熱心に違いない兵部卿の宮のお心を、惑わしてあげよう」
と、あれこれたくらんで趣向をめぐらせていた。本当の自分の娘だったなら、これほどまでに、お節介を焼いて大騒ぎはしないだろう。本当に困った性分なのだった。
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