胡蝶 その二十九

 雨はいつの間にかやみ、風に竹の枝がさやさやと鳴るころ、はなやかにさし上った月の光が美しく、しっとりとした夜の風情だった。


 女房たちは、二人のしんみりとした水入らずの話に遠慮して、側近くにいなかった。いつも親しく逢っている仲だったが、こうしたよい機会はめったにないので、光源氏は心の思いを一度、口にしたはずみに、一途につのってきた感情にそそのかされて、着慣れて肌に柔らかくなった着物を、衣擦れの音も実にうまく紛らわせて、人に気づかれないようにそっと脱ぎ、玉鬘の横にぴったりと添い寝した。玉鬘は辛くてたまらず、女房たちもいったいどう思うかと、例のないことなのでたまらなく情けない気持ちでいた。

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