胡蝶 その三十
もしも本当の親が側にいたら、それほど大事にせず捨て置かれても、こんなあさましい目にあうことはないだろうにと悲しくて、隠そうとしても、しきりに涙があふれ出るのが、見るからに痛々しい様子なので、光源氏は、
「そんなふうにいやがられるとは恨めしいことです。まったくの赤の他人でも、男女間のならわしで、女は男にみな身をまかせるものなのに、こんなに長い間親しくしていて、添い寝する程度のことが、何でおいやなのでしょう。これ以上、無理なことをしようというつもりは決してありません。こらえようにもこらえきれない激しい恋しさを、せめてなだめるだけなのに」
と、いかにもしみじみとやさしく話すことには尽きない。今までにもまして、こうして近々と添い寝までした女の感じは、昔の夕顔そのままで、光源氏は切なさに胸が締め付けられるのだった。
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