胡蝶 その五

 日の暮れかかるころに、「皇麞」という舞楽の音色がとても面白く聞こえてくる。それを耳にしながら女房たちは、夢うつつのうちに釣殿にさし寄せられて船から下りた。


 この釣殿の飾りつけはとても簡素だが優美な風情があって、中宮と紫の上両方の若女房たちが、われ劣らじと贅を尽くした衣裳や容貌が、花々をこきまぜて織りあげた錦にも劣らないくらい美しく見渡される。耳慣れない世にも珍しい音楽の数々も奏でられた。舞人なども、光源氏が特に念入りに選び、見物する人々が満足するよう、妙技を尽くして舞わせてみせた。


 夜になったがまだ飽き足らない気持ちがして、庭前に篝火をともし、階段のもとの苔の上の楽人たちを呼び寄せた。

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