胡蝶 その六
上達部や親王たちもみなそれぞれ、筝や琴や琵琶、笙、篳篥や横笛などをとりどりに演奏した。師匠格の楽人のなかでもことに名人ばかりが春の調べの双調を吹きたてると、御殿の上でこれを受けて合奏する琴の音色も、とても華やかに掻き立てて、催馬楽の「安名尊」を演奏するときには、この世に生まれた甲斐があったと、何のわきまえもない下人まで、御門のあたりにぎっしりと立ち並んだ馬や牛車の間にまじって、満面の笑みを崩して聞いていた。
空の気色も音楽の音色も、春の双調や響きは、実にほかの調べより格段にすぐれているというその違いが、集まった人々にもよくわかったことだろう。
夜もすがら管絃の遊びをして、明かした。調子の変わる返り声になると、舞楽の「喜春楽」の演奏も加わって、兵部卿の宮が催馬楽の「青柳」を幾度も繰り返し、見事に謡った。主人の光源氏も、声を添えて合唱するのだった。
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