初音 その十三

 今日正月二日は、臨時の招宴の日で、客が多い忙しさにまぎらして、紫の上と、まともに顔を合わさないように避けていた。


 上達部や親王などが、いつものように一人残らず年賀に参上する。音楽の遊びをして、その後の引き出物や祝賀の品が、またとなく結構なものだった。たくさん集まった客たちが、自分も負けまいと立派に振舞っているが、その中に光源氏に多少とも匹敵するような人が一人もいないとは。一人一人別々に見ると、この頃は諸道に精通した人々も大勢いて、それぞれ巧者なのに、光源氏の前では気圧されてしまうのはだらしないことだ。ものの数にも入らない下仕えのものでさえ、この六条の院に参上するには、格別に気を遣う。まして年若い上達部などは、今年は新しい姫君もいるので、ひそかにその姫君への期待の思いもあり、むやみに緊張するのが例年の様子とは違っているのだった。

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