初音 その四

 うす氷とけぬる池の鏡には

 世にたぐひなきかげぞならべる




 たしかに歌の通りに、すばらしい二人の仲だった。

 紫の上は、




 くもりなき池の鏡によろづ代を

 すむべきかげぞしるく見えける




 何につけても幸せな夫婦の契りが、歌のように永遠につづきますようにと、仲睦まじく詠み交わしていた。そういえば今日はちょうど子の日だった。なるほど千歳の春を、子の日にかけて長寿を祝うのにふさわしい日だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る