玉鬘 その十一
大変なことになったと思って乳母たちは聞いていた。長男の豊後の介が、
「やはりこんな問題が起こるのは、ひどく厄介でもったいないことだ。亡父の少弐の遺言もある。何とか工夫してこの際、玉鬘様を京にお連れすることにしよう」
と言った。娘たちも泣きまどって、
「母君があんなふうにどこかへ消えておしまいになり、行方不明なのだから、せめてそのかわり、玉鬘様には人並みにふさわしい結婚をしていただきたいと願っているのに、あんな田舎者と結婚されるなんて」
と嘆き悲しんでいた。大夫の監はそんなこととは知らず、自分は非常な名望家ででもあるかのように自惚れて、恋文など書いて寄越した。筆跡などはそれほど見苦しくなく書き、中国伝来の染紙を、芳ばしい香を十分薫きしめて、なかなかうまく書けたと自分では思っているらしいが、その言葉遣いと言えばひどくなまっているのだった。
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