玉鬘 その九

 玉鬘はものがわかってくるにつれて、身の上をとても辛く思い、年に三月の長精進などもした。二十歳ほどになると、すっかり成人して、こんな田舎には惜しいほどの、この上もなくすばらしい見事な姫君になった。


 乳母の一家が現在移り住んでいるのは、肥前の国だった。そのあたりでも多少とも由緒のある家のものは、まずこの少弐の孫娘の噂を人伝に聞いて、やはりまだ、絶えず恋文を送ってくる。それは聞くも耳うるさいほどの煩わしさであった。


 肥後の国一帯に一族が繁栄していて、その土地では声望も高く、勢力も盛んな大夫の監という武士がいた。恐ろしく武骨な心の中にも、多少とも好色な気持ちも持っていて、器量のいい女を集めて自分の妻にしたいと思っていた。この玉鬘のことを聞きつけると、



「どんなにひどい体でも、自分は目をつぶって、妻としよう」



 と、とても熱心に求婚してきた。

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