玉鬘 その六
乳母の夫の少弐は筑紫での任期が終わり、京に上ろうとしたが、何分道中が長くて大変であり、格別の勢力もないので財力もともなわず、あれこれ迷いながら、すっぱりと旅立ちもできかねているうちに重い病気になり、死ぬかと思うようなときにも、この玉鬘が十歳ばかりになった姿の、妖しいほどの美しさを仰いで、
「自分までこの姫君をお見捨てして死んでしまったら、姫君はこれから先、どのように落ちぶれてさ迷われることか。こんな辺境の地に成人なさるのも畏れ多いことだ。一刻も早く京にお連れして、父君にもお知らせして、あとは御運のままに姫君の将来を拝見させていただこうと思っていた。都は広いところだから便宜も多く、何の心配もあるまいと思って旅の支度を急いでいたのに、こんなところで死んでしまうとは」
と心配そうに言った。少弐は三人の息子たちに向かって、
「ひたすら、この姫君を京へお連れ申し上げることだけを心がけよ、私の死後の供養などは考えなくてよい」
ということを特に遺言したのだった。
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