玉鬘 その四
道中、景色のよい所々を見ながら、
「姫君の母君はお気持ちが若々しくいらっしゃったから、こんな道中のいい景色もお見せしたかったのに」
「さぞお喜びになったことでしょうね」
「でもあのお方がいらっしゃれば、私たちは筑紫なんかに下らなかったことでしょうよ」
などと言って、何かにつけ、京のことばかり思いやられて、返る波を見ても羨ましく、心細くなるのだった。船頭たちが荒々しい声で、
「うら悲しくも遠く来にけるかな」
と歌うのを聞くと、娘二人は差し向かって泣くのだった。
船人もたれを恋ふとか大島の
うらがなしげに声の聞こゆる
来し方も行方も知らぬ沖に出でて
あはれいづくに君を恋ふらむ
都を遠く離れ、田舎へ旅する悲しさに、<鄙の別れにおとろへて>の歌を思い出し、二人はそれぞれ気晴らしに、こんな歌を詠んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます