乙女 その六十八
今日の行幸は公式のものではなく、内々のことなので、多くの方々にまで盃がなかったためか、歌もこれだけだった。それとも書き落としてしまったのだろうか。
音楽を奏している場所が遠くて、よく聞こえなかったので、帝は前に楽器を取り寄せた。
兵部卿の宮は琵琶、頭の中将は和琴、筝の琴は朱雀院の前にさし上げて、琴は例によって光源氏がもらった。このように優秀な名手の方々が、それぞれ優れた演奏に秘術を尽くした音色は、例えようもなくすばらしいものだった。
唱歌の上手な殿上人たちが控えている。催馬楽の「安名尊」を謡った次には、「桜人」が謡われる。月がおぼろに現れ始め、趣の深いころ、池の中の島のあたりに、ここかしこと篝火が焚かれて、この夜の遊びの宴も終わったのだった。
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