乙女 その五十六

 六位の浅葱の袍に引け目を覚えてこれまで参内もせず、塞いでばかりいたが、五節にことよせて、直衣なども、浅葱とは違う色も着ることを許されて宮中に来た。まだいかにも子供っぽく綺麗な人だが、そのわりにはませていて、はしゃいであちこち歩いていた。


 帝よりはじめ誰もが、この夕霧を大切にすることは一通りではなく、またとない信望だった。


 五節の舞姫が参内する儀式は、どの邸でもいずれ劣らず、それぞれにこの上なく立派に行った。今年の舞姫の器量は、光源氏と、按察使の大納言の舞姫が特にすぐれていると人々が誉めそやした。なるほど二人ともとても美人なのだが、おっとりとして可憐そうな感じでは、やはり光源氏の舞姫にはとても敵う人はいない。


 この舞姫はいかにもきれいで華やかで、惟光の娘とも思えないくらいに美々しく装いたてている姿かたちが、まれにみる美しさなので、こうもほめそやされるのだろう。例年の舞姫よりは、皆少し大人びていて、今年は本当に格別な年なのだった。

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