乙女 その五十五

 ちょうど、雲居の雁と同じくらいの年と見えて、雲居の雁よりも少し背が高くすらりとして、姿かたちなどに風情があり、魅力は雲居の雁よりまさっているようだった。暗いからはっきりとは見えないが、その感じが雲居の雁を思い出さずにはいられないように似ているので、心が移るというのではないが、胸が動揺して、自分の衣裳の裾を引いて、衣擦れの音をさせ、舞姫の注意を引いた。舞姫は何も気づかす不思議そうにしているので、




 あめにます豊岡姫の宮人も

 わが心ざすしめを忘るな




「はるかな昔からあなたに思いをかけていたのです」



 と言うのは、あまりにも唐突すぎた。若々しく美しい夕霧の声だったが、舞姫は誰とも思い当たらないので、薄気味悪く思っているところに、舞姫の化粧直しをしようと騒いでいた介添えの女房たちが、忙しそうに近寄ってきてざわめいてきたので、夕霧はとても心残りのまま立ち去ったのだった。

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