乙女 その五十二

 光源氏は、今年の新嘗祭の節会に、五節の舞姫をさし上げた。これというたいした用意をするわけではないのだが、供の女童の衣裳など、期日も迫ってきたというので、急いで作らせた。東の院の花散里のところでは、参内の夜の人々の衣裳を作らせた。光源氏は、全てのことにわたって気を配ったのだ。梅壺の中宮からも、女童や下仕えの女房の衣裳など、言いようもなく見事にして光源氏のところにさし上げた。


 昨年は、藤壺の宮の諒闇のため、五節なども停止したのが淋しかったものなので、殿上人の気分も、今年は例年よりは、華やかにと思っているらしい折柄なので、舞姫を差し出す家々のあちらこちらでも競争して、万事とても立派にこの上なく善美を尽くすと評判だった。公卿からは按察使の大納言に、左衛門の督、それに殿上人からの五節の舞姫は、今は近江の守で左中弁を兼ねている良清がさし上げた。舞姫たちはすべて宮中にとどめて宮仕えをするようにと、特別の帝の仰せごとのある年なので、娘をそれぞれ舞姫としてさし上げるのだった。

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