乙女 その四十八

 二人はお互いに恥ずかしがって胸がどきどきするので、ものも言わずただ泣いていた。夕霧は、



「頭の中将のお気持ちがあまりにひどいので、もういっそあきらめてしまおうかと思うけれど、あなたと逢えなくなると、さぞ恋しくてたまらないでしょう。いつでも逢いやすかったこれまでの間に、なぜもっとお逢いしておかなかったのだろう」



 と言う様子も、とても子供っぽく痛々しそうに見えた。雲居の雁も、



「私だって、すっかり同じ気持ちですわ」



 と言う。夕霧が、



「恋しいと思ってくださいますか」



 と尋ねると、雲居の雁がかすかに頷いている様子も、いかにもあどけなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る