乙女 その三十五

 頭の中将は、



「もうよい。当分、こんなことを外に洩らさぬように。どうせ隠しきれることではないが、せいぜい気をつけて、せめてそんな話は嘘だと言い張ってほしい。近いうちに雲居の雁は私のほうに引き取ろう。それにしても大宮のお気持ちは実に恨めしい。お前たちは、まさか、二人が仲良くなればよいなどとのぞんだわけでもないだろうな」



 と言うと、乳母たちは困ったことだと思いながらも、自分たちの責任は一応逃れた嬉しさに、



「まあ、ひどい。もしこのことが按察使の大納言さまのお耳に入ったらどうしようかとまで、心配しているのですもの、お相手がいくら立派でも、ただの臣下では、どうして結構な御縁などと思ったりいたしましょう」



 と言うのだった。

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