乙女 その十五

 頭の中将が大内記にしきりに盃をさすので、すっかり酔っ払ってしまった大内記の顔は、ひどくやせこけていた。この人は人付き合いもしないとても変わり者だった。学才のあるわりには出世できず、人から見捨てられて貧乏していたのを、光源氏が見所があると見込んで、夕霧の学問の師として、こうして特別に召し出されたのだった。身に余るまで目にかけていただいて、この夕霧のおかげで、突然運勢がよくなったことを思うと、まして将来は、肩を並べる人もいない世間の評価を得ることが出来るだろう。


 夕霧が大学寮受験のため、大学の寮に入った当日は、寮の門前に上達部の車が数知れず集まっていた。およそ世間にここに来ない人はいないだろうと思われる有様だった。そこに侍者たちにかしずかれて、装束など見事に着付けされて入ってきた、元服したばかりの夕霧の様子は、まったくこんな貧しい学生の仲間入りには不釣合いで、いかにも上品で可愛らしく見えたのだった。

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