朝顔 その三十

 月がますます澄み渡り、静かで美しく冴え返っている。




 氷閉ぢ石間の水は行きなやみ

 空澄む月の影ぞ流るる




 と詠みながら、空を眺めて少し首を傾げている紫の上の姿は、似るものもなく愛らしい限りだった。


 髪や面差しが、恋焦がれている藤壺の宮の面影かと、ふと思うほど美しいので、この節、朝顔の姫宮に少し惹かれていた心も、また紫の上に取り戻されてそそがれることになるだろう。


 そのとき、池の鴛鴦の鳴く声が聞こえてきたので、光源氏が詠んだ。




 かきつめてむかし恋しき雪もよに

 あはれを添ふる鴛鴦の浮寝か




 光源氏は寝所に入っても、藤壺の宮のことを、ひそかに心に思い続けながら、休んだのだった。

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