薄雲 その十二
大堰では、姫君が限りなく恋しくてならない。それにつけても姫君を手放してしまった自分の迂闊さが悔やまれて悲しさが増すばかりだった。あのとき、あんな意見を出したものの、今となっては尼君も淋しさにすっかり涙もろくなっている。
それでも姫君がこれほど大切に扱われていると聞くのはうれしくてならない。
この上はこちらからどのような贈り物をさし上げようかと、ただ姫君付きの女房たちに、乳母をはじめとして、世にも珍しい色合いの衣裳を、取り急いで用意して贈ったのだった。
光源氏は、あまり訪れが間遠になっては明石の君がどんなに待ち遠しく思うだろう。やはり姫君を手放したせいで案の定だと、ますます恨めしく思うに違いないと不憫なので、その年の暮にお忍びで大堰に訪ねるのだった。
それでなくてもひどい淋しい住まいなので、朝に夕に大切にお世話をしてきた姫君とさえ別れてしまって、どんなに悲しんでいるだろうと思いやられると、光源氏は心苦しいので、手紙なども絶え間なくやった。紫の上も、今では明石の君のことで、あまり恨み言を言わない。何事も可愛らしい姫君に免じて大目にみているのだった。
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