松風 その二十五
二条の院に帰り、しばらく休んでから、山里の話などを紫の上にしてあげた。
「お暇をいただいた日数も過ぎてしまったのでとても悪いと思っています。例の遊び好きの連中が探し当ててきて、強引に引き止められたのについ負けてしまって。今朝はどうにも気分が悪くて」
と、紫の上と一緒に寝所に入った。
紫の上は、例によってご機嫌斜めのようだが、光源氏はわざと気づかないふりをして、
「比べ物にならない相手を、対等に考えるのはつまらないものですよ。自分は自分だと平気で無視していればいいのです」
と、教える。
日が暮れかかるころ、宮中に出かけるときに、見られないように横を向いて隠しながら慌てて書くのは、大堰への手紙のようだ。そばから見ても、いかにも綿々と情をこめて、書いているように見える。使いの者に、ひそひそと言い含めて出すのを、紫の上の女房たちは憎らしく思っていた。
その夜は宮中に宿直の予定だったのに、紫の上の機嫌が直らなかったので、夜は更けてしまったが、ご機嫌取りに退出していった。
そこに先ほどの返事を使いの者が持って帰った。紫の上に隠すこともできず、その場で確認する。別に紫の上の気に障るようなことも書いてなかったので、
「この手紙はあなたが捨ててください。ああ、わずらわしい。こんな手紙が散らばって人目についたりするのも、今ではふさわしくない年になってしまった」
と言って、脇息に寄りかかっていた。
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