蓬生 その九
大弐の北の方は、
「そらごらん。どうして寄る辺もないみっともない暮らしの人を、誰が人並みに扱ってくださるものか。仏や聖でさえも、罪業の軽いものをこそ救いやすいと導く。ここまで落ちぶれて情けない有様でいながら、気位高く世間に対して威張っていて、父宮や、母の在世のときと同じように思っている、あの高慢さが可哀想なものさ」
とますます末摘花を愚かしいと思って、
「やはり決心なさいませ。世の中が辛く悲しいときは、そういうことのない淋しい山奥を探して旅に出るものですよ。田舎などは嫌なところと想像なさるかもしれませんが、そうむやみに世間体の悪い扱いはいたしませんから」
などと、言葉巧みに誘うと、すっかり気を腐らせていた女房たちは、
「おっしゃる通りにすればいいのに。どうせこれからも大したこともなさそうな身の上なのに、どういうおつもりで、こんなに我を通そうとなさるのかしら」
と、ぶつくさ苦情を言って非難した。
侍従も、あの大弐の甥とかいう男と深い仲になっていて、男が侍従を都に残しておいてくれそうもなかったので、不本意ながらも侍従も一緒に出立することになった。
「姫君を残していきますのが、とても辛くてなりません」
と言って、末摘花にも九州行きをすすめるが、末摘花はまだ今でも、こんなに訪ねないまま、すっかり遠のいてしまった光源氏に、やはり望みをかけているのだった。
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