桐壺 その七
光源氏は十二歳になった。この歳になり、光源氏は元服する。これからは大人として扱われるようになったのだ。
帝は元服を機に左大臣の娘との結婚をほのめかした。光源氏は恥ずかしがったが、左大臣は乗り気のようだ。
その夜、早くも光源氏は左大臣の邸宅で結婚式を挙げることとなった。相手は左大臣の娘、葵の上である。
葵の上を妻にもらった光源氏だが、その心は複雑だった。どうしても藤壺の宮のことが忘れられないのだ。
(もし妻にするのなら藤壺の宮のような女性を妻にしたい。葵の上は素晴らしい女性であることは認めるが、どうも自分と性が合わないようだ)
光源氏が元服してから、帝も距離を置くようになった。大人として扱うようになったのだろう。
しかし、光源氏のほうは大人になりきれない。一週間のうち、ほとんどを宮中で寝泊りしている。新婚の葵の上が待っている左大臣家にはほとんど帰らないのだ。
それも、宮中には藤壺の宮がいることが原因である。時折感じられる藤壺の宮の気配を光源氏が追っているのだ。
光源氏は宮中に居座り続け、
「こんなところに理想の妻を迎えて一緒に住めたらどんなに幸せだろう」
と考えた。
光源氏の恋物語が、幕を開いた。
桐壺 完
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