7日目 《それでも俺は》
~青年が狩人と出会う十分前~
壊れた家屋の傍に1人。
「俺は…何も間違って…」
その悲痛な言葉は誰にも届くことは無い
自分は何故あんな事を言ってしまったのだろうと悔やもうがどうしようもない
『死んどったらええねん…』
「なんで…なんでだよぉ…!!」
男は叫ぶ。
「何でそんな簡単に…人を…!」
『どんだけ弱った信念持ってんだテメェは!?』
違う
信念なんて大層な物は持ち合わせていない
あるのは・・・
「殺せるんだよぉ…!!」
恐怖だった
他人の死に対する過剰過ぎるほどの恐怖があった
ゲームがスタートする前も本当は笑っているだけでも心が砕けそうだった
分かってはいても変えることは出来ない
絶対に揺るがないただ一つの感情
人を殺す奴を殺す
それすらも出来ない癖にあの男を…彼を殴ってまで止めてしまった
先程、自分が発した言葉だって自分が人の死に関与したくないが為の[逃げ]だった
結果、更に多くの死人を出す事になるかもしれないのに
しかしそんな事を知っているのは彼自身のみ
彼も…彼女も…自分が邪魔者にしかならないから置いていったのだ
それを止める権利は無い
こんな…俺には…
「ッ…フゥ」
彼に蹴られた腹が痛む、もしかしたらあばら骨が何本か逝ったかもしれない
これも自業自得と言うものだろうか?
いや…
「足りない…か」
自業自得だとしたらこんなものでは足りない
それこそ俺が死んだって足りやしない
それなら・・・
そう思い、立ち上がる
「よし…吹っ切れた!」
そう、それならいっそ開き直れ。
過ぎた事を悔やんだって時間の無駄なのだから
やってしまった事は仕方無い!
自分の失敗は自分で取り返すしか無いのだから
「貰ったァ!!」
次の瞬間、大きな音と共に右肩に激痛が走る
「ッ゛!?」
何が起こったのか掴めない
隠れる場所も無いうえ、逃げ場も一つだけ
能力がバレるのはあまり宜しくないが生きるためならば
「《
「もうイッパァツ!!」
「《
ほぼ、音がなるのと同時に男の能力が発動する
カァン
そんな音が一帯に響き渡る
「な…なんだよそれ!ふざけんな!こちとら銃使ってんだぞ!?」
「んな事知らへんわマヌケ…と言うか、スナイパーライフルなんて素人が使いこなせるわけ無いやろが!」
その男の腕は鋼の様な鈍い色に染まり、弾丸などではもろともしない
「自分、声からして男やろ!?、隠れて撃つなら好きにしたらええが、大人しくアビリティとやらを使うたらどうや!?もしかしたら勝てるかもしれへんで?」
相手を挑発する様ににやけながら喋る
案の定、スナイパーライフルを持った中年の男性が目にも止まらぬ速さで出てくる
「潔ええやん、やるやんけ!」
「お前は…」
男性が視線を合わせないながらもそれはそれは悔しそうに喋り出す
「お前一体なんなんだよ!?」
「ワイか…そやな…ワイは…」
男は叫ぶ
「健康優良日本男児代表!19歳!高校は卒業済み!その名は!」
その男の名は
「
「・・・は?」
「よく覚えとけェッ!」
覚悟を決めた男は強い
それは彼の中の常識である
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