6日目 《心境》

今は午前2時45分、ゲーム中断まで残り4時間15分。まだ長いな


「にしてもアンタ、良く殺そうと出来たわね。正直な所、あんまり期待して無かったわ」


森の中を掻き分けながら進む中、突然一緒に歩いていた女が口を開く


「んな事言ったって・・・アイツを殺らなきゃ、もっと多く死人が」


「ホントにそれだけ?」


「は?」


思わず問い返す


「人間、急にそんな正義感で動けるほど出来ちゃいないわ。だからアンタも、何かしらあったのかなって。だって、ここにいる奴ら全員、何かしらヤバイ事があった訳よね?なら尚更じゃない」


「・・・そうかもな」


しばし返答を考えた後、そう口から発する


「でも、良く考えて分からない以上、心の奥深くに眠ってるんだろ。もしかしたら俺、サイコパスになっちまってんのかもな」


「・・・何か今の喋り方臭かった」


なんだコイツ

人があぁ言えばこう言うし、こう言えばあぁ言うし。どれだけ馴れ馴れしいんだ。下手したらコイツ、さっきの糞ガキの次に苦手だ


「・・・すいませんでしたね。癇に障る様な事して」


「人の心はあんま読むもんじゃないぞ・・・」


「あらごめんなさ~い、顔にそう書いてあったからつい~」


なんかさっきから妙に馴れ馴れしいな

やたらとフレンドリーに接するのも考え物だ。いざ裏切られた時、心の迷いが出来て面倒だし


「・・・ん?あれなんだろ?」


またまた突然、女が立ち止まりその口を開きながら指を指す

見た感じはただのゴリラ・・・いや、そんな可愛いものじゃ無い・・・もっとヤバイやつだ


「マズッ!」


女を茂みに押し込み、自分も近くの大木の影に隠れる


「ねぇ!何いきなっ」


口の前で罰を作り、俺の意図を伝える

何やら気配を感じたのでその方向を見たら案の定、妙な影がいたのだ


「_______________・・・」


ようやく女との意思疎通に成功し、歩いてきた人間の様子を伺う

いや・・・形はまんま人間だが・・・雰囲気が妙だ・・・


仮面を被り、太陽が見える中、真っ黒いコートを羽織っている

どう考えたって、どう見たって危ない奴だ

接触はなるべく避けるべき・・・


『《狩人》を発見しました。《ENEMY》に登録します』


突然、デバイスから徐ろに音が鳴り心臓が飛び跳ねる


バクン・・・バクン・・・


「_______________・・・!!」


見つかった・・・!?


ダメだ、今顔を出せばそれこそ・・・!


クッソォ・・・!!


怖え・・・!!


次の瞬間に聞こえたのは獣の叫び声の様な物だった


少し覗き込むと、あのゴリラもどきのが狩人とやらにかぶりつこうとしていた


しかしその更に次の瞬間


それは刹那の出来事だった


狩人は何処からとも無く、銃の様なものを取り出すと、ゴリラもどきの顔が消し飛んでいた


「おい、そこの坊主と嬢さん。アンタら、運がいいぜ」


突然声をかけられ身体が跳ねる様な感覚に陥る


「・・・《模倣イミテイション》!」


隠れてた大木を素材として、先程と同じ要領でナイフを作り出し狩人に飛びかかる


しかしそれはいとも簡単にいなされ、鳩尾に拳がめり込む


「ガッ・・・!?」


「動きが短調。まぁ素人相手ならギリギリって所か」


その拳の威力は尋常では無く、一瞬、死を覚悟する程の物だった


「嬢さんの方は良いのかい?」


するとゴソゴソと音がし、隠れてたはずの女が出てくる


「・・・今のだけで分かるわよ・・・私に勝ち目なんて無いわ・・・」


「そうか。俺はこの小僧みたいにかかってくる方が好みだけどな」


「お…お前の好みなんて…御免被るぜ…」


そんな台詞を吐き捨てるがその狩人は話し続ける


「しかし坊主、明日からは絶対に俺と同じ格好をした奴とは戦うな。命が大切ならな。1日目は殺すなって言われてるから見逃すが、次は」


男は手に持っていた銃を俺の眉間に突きつける


「バァンッ。だ。覚えとけよ。」


そう言い残して、その男は去っていった


俺の心の中に大きな不安と絶望を残して

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