5日目 《目覚めの時間》
「して・・・あげましょうか?」
俺の中で何かが弾ける音がした
それは理性という最後の砦が崩れ落ちる音だった
先程から妙にムラっとは来ていたが誘われた以上仕方ない
据え膳食わぬは男の恥てもんだ
そう思っていると口の中に舌を突っ込まれる
「あ・・・?」
すると間も無く、俺の意識は何処かへ飛んでいってしまった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・んあ?」
目覚めると先程までと同じベッドの上
だが決定的に違う点があった
「痛ッ!」
手足が拘束されていた
それも縄を何重にもしてガッチリと
「やっと起きたの?まさか効くのにあそこまでかかると思わなかったよ」
先程までの女の子の姿は既に無く、こちらを見つめるのは冷酷な目をしている人間だけだった
「使いづらい能力かと思ってたけど、案外そうでもないかも」
「能力だ・・・!?」
「言ってなかったっけ?僕の能力、色んな霧を出せる様なんだよね。毒が混じったのでも、酸が混じったのでも。」
先程と同じように口を耳元まで持ってくる
「ムラっと来ちゃう様な奴も・・・」
やられた
頭が回らなかったのはそれが原因かよ
今もどうにも脳が働いてくれない
「なら何でこんな回りくどいやり方するんだ・・・?、毒が出せるならもっと楽に殺せただろうが・・・!」
ふと疑問に思った事を質問してみる。
その質問に帰ってきたのは
「面白いから?」
ただその一言
「面白いからだ・・・!?」
「子供のアタシに欲情して襲って来るんだよ?それを眠らせて・・・ナイフでじっくりいたぶって殺すの。その時の顔がもう・・・!」
話している間に気持ちが高揚してきたのかやたらと声が高く、大きくなっていく
「最っ高・・・!」
ダメだ、コイツは狂ってる部類の人間だった
ベッドに拘束されている以上、逃げられ・・・
待て、手に結ばれている縄はベッドの金具に括りつけられているだけだ
その金具に触れられれば或いは・・・!
「《
触れる事が出来た金具をナイフの形に作り変え、拘束を解く
その金具はベッド全体を支えていたのかナイフになった途端に床に落ちるが、こうなればもうこっちのターンだ
「良くもまぁやってくれたなこの糞ガキ・・・!」
「!?、クソ!《
途端に視界は真っ白になり、足元すら見えなくなる
ガチャッと音がしたと言う事は・・・
「逃げやがったな!」
急いで外に出ると、そこには先程の糞ガキと、もう2人、女と男が立っていた
女は俺を見るなり
「あら、あんたまだ生きてたんだ。てっきりもう殺られたもんだと思ってたわ」
「何を・・・!?」
「仕方ないでしょ。その女、私が見つけた時にはもう1人殺ってたわよ?」
「んな!?」
コイツ、俺と出会う前の僅かな間でもう1人殺してたのか・・・?
どうやら俺はとんでもない蜘蛛の巣に引っ掛かってしまったようだった
しかしそれを俺は脱出できた
俺は勝ち組って奴だ
「どうするの糞ガキ?アンタはもう囲まれてるのよ?大人しく殺されるか、リタイアしなさいな」
「ま、待ってくれや!!」
すると先程からいた男が女の前に立ち塞がっているようだった
「何よアンタ!?邪魔しないで!」
「何も殺す事あらへんやん!せめてこう・・・ボコボコにして分からせてやりゃいいやんけ!な!」
「ああいうタイプの人間は懲りずに同じ事繰り返すの!何ならアンタも殺すわよ!」
思わず唖然としていると、糞ガキが何かボソボソと喋っている事に気づき、その低い位置にある側頭部を蹴り飛ばす
「んな!?」
「ナイス!そのまま殺りきるわよ!」
突然の大きな音に見えない男は驚き、見えていた女は歓喜する
倒れ込んでいる糞ガキの首根っこを掴み、マウントポジションを取る
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
涙をながしながら掠れた声でガキはそう言う
「まだ・・・死にたくないよぉ・・・」
人殺しをした人間は既に人間では無い。野蛮な獣だ
自分にそう言い聞かせる
そう。これは人殺し何かじゃない
狩りだ。
「人を殺して・・・!、のうのうと生きていけると思うなァ!!」
模倣したナイフを振りかざすと右からとんでもない威力のドロップキックを喰らう
「いい加減にせえやァ!!」
「ッッ!?」
やはり威力は凄まじく先程まで居た小屋の方まで吹き飛ぶ
「自分!ほんまにアイツを殺す気やったんか!」
「当たり前だろ!今、殺し損ねたら、アイツはまた人を殺し始めるぞ!」
「自分やって今、その人殺しになりかけたやろうが!」
「人間は人を殺した時点で人間じゃ無くなる!俺は危険な獣を殺そうとしただけだろうが!」
「お前・・・!」
「《
「しまっ・・・!」
するとこの一帯が白い濃霧に包まれ、その場に留まるしかなくなる
5分後、霧が晴れると糞ガキの姿は影も形も無くなっていた
「また取り逃がしたわね・・・犠牲者が少ない内にああ言うのは片付けましょう・・・って」
「いい加減にしろよこの糞野郎!!結局、お前のせいで、より多くの死人が出るんだぞ!?それをテメェは何とも思わねぇのか!?」
「・・・・・・そうや、どうせ殺し合うんやから、今の内に多く死んどったらええねん・・・」
「今度はそう逃げるのか?人が死んだら良いだ!?ふざけんのも大概にしろよこの糞野郎・・・!」
思わずしおらしくなった男の襟首を掴み、無理矢理立ち上がらせる
「人を殺す事を殴ってまで止めた奴が、今度は死んだら良いだ!?どんだけ弱っちい信念持ってんだテメェは!?それでも男か!?」
あまりに喋らないので思わず腹に膝蹴りを2発ほど入れる
「カハッ!!」
「・・・もう良い、テメェはここでのたれ死んでろ。俺達は奴を殺す。それは決定事項だ」
「アンタらいつまでやってんのよ?早く行かないと遠くへ逃げられるわ」
「あいよ。」
そう言って俺は走り出した女に付いていくことにした
尻目に男を見ると、そこに伏せていたままだった
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