4日目 《理性とは?》

「ハアッ・・・ハアッ・・・!」


走って既に5分は経っただろうか、やはりこれだけ森林の中を走ると足への負担が半端じゃない


「クッソ・・・!、日頃から運動しとくんだった!」


昔、運動部に入ってたとは言え、やはり数年の時が経つとその能力も衰える。


それにしてもそろそろ近くの筈なのだが一向に人の姿は見えない


ふと妙な臭いがする事に気づき、その場に立ち止まってその臭いを確かめる


何かが焼けるような・・・違う・・・焦げて・・・


「お兄さん!避けて!」


突然の声に驚きつつもその場から跳ねる様にして離れる


転けそうになりつつも木に手をついて体制を整え、先程まで俺がいた位置を見ると、真っ黒に焦げあがっている


「なんだ・・・これ・・・?」


俺は今、殺されそうになったのか・・・?


嘘だろ・・・何でそんな簡単にこんなクソゲーを受け入れてしまうなんて


「私と一緒に逃げて!」


先程助けてくれた声の主に手を引かれるままに走る


「は!?は!?」


「良いから!死にたくないでしょ!」


何でこの少女の対応はここまで早いのだ。俺は未だに戸惑っているというのに


「でも、逃げるって!?」


「良い場所があるの!私、そこに飛ばされてたから!」


「近いのか!?」


「森を抜けてすぐそこに!廃屋があったの!」


走りながらの会話はすぐに終わり、すぐに逃走へと全力を注ぐ


森を抜けるには案外、時間が掛からなかった

追跡者は撒いたようで、もう俺達の背後にいる人物はいなかった


「ハアッ・・・ハアッ・・・!」


またまた息切れ

なんだ?今日は何か走ってばっかな気すらしてきたぞ


俺の手を引いていた女の子はと言うと・・・


「・・・・・・・・・」


あら、走りすぎちゃったのかな?地面に転がってる


「大丈夫?手、貸す?」


「・・・お願いします・・・と言うか・・・」


「ん?」


「おんぶって・・・くださいぃ・・・」


そんな・・・女の子にそんなふうに頼まれて・・・


~~~~~~~~~~~~~~


「あっ、そこを左にです!そしたらちっちゃい小屋がありました!」


「了解っと。」


断れるわけ無いんだよなぁ・・・


それにしてもこの子、やったら軽いな、いつも公園で遊んでる少年達の1人を家まで送って行った事があったが、その子達と同じ位だ。しかも制服っぽいのを着てるって事は中学生か高校生だよな?最近の女の子ってこんなもんなの?


「あっ、あったあった。ここで良いんだよね?」


「そうです!ここです!ここ、ここ!」


あぁもう可愛くて仕方が無い

こんな女の子に触れたのはいつ以来だ?


「鍵は私が持ってるんで、そろそろ下ろしてもらっていいですか?」


「おけ。はいよっと」


その子を地に下ろすとさっきまであった暖かい人の体温が無くなってしまった事が少し残念である。誠に


「開きましたよ!さ、どうぞ!」


「廃屋の中にしちゃやたら綺麗だな」


家の中はまるで最近建てられたかの様に小綺麗でベッドや、タンスなど必要な家具は最低限ある


「裏には井戸もありましたよ!」


「はあ~すっごい・・・」


それにしてもさっきから何だか妙な匂いが・・・何かこう・・・そう・・・ツンとして・・・何なんだ・・・?

クソ・・・頭が回らん・・・


ふと視線を感じ、そちらを見るとあの子がこちらを見ている事に気づく


「ん?どうしたの?」


「いや・・・名前、教えて貰ってないな…って」


恥ずかしがりながらそういう彼女は天使のようで・・・いや、この殺伐とした世界に現れた本物の天使なのでは・・・?


「私・・・来栖川千鶴って言います…名前・・・聞いてもいいですか?」


「名前・・・名前・・・」


「あぁ、思い出せないなら良いんですよ!仕方ないですよね…突然こんな事になって」


いや、そう言うんじゃなくて…何か…脳が出勤を拒否していると言うか・・・


「と言うか…それ…」


彼女が指さした物

それは元気になった我が息子だった


「あの・・・これは・・・なんというか・・・」


なんと弁解しようか考えてる内に彼女は俺を押し倒し、そのまま跨る


「!?」


「・・・あげましょうか?」


なんて言ったかよく聞こえなかったのでもう1度頼むと、顔を俺の耳元へ吐息がかかるほど寄せてこう囁く


「して・・・あげましょうか?」


俺の脳が機能停止した瞬間だった

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