第54回『箱庭の城』

使用お題→【被害妄想】【創造主】【テクニシャン】<萌え>




 小さい頃から器用さを褒められていた。

 絵を描いて、折り紙を折って、粘土を捏ねて。

 何かを作り上げる度、私は褒められ、賞賛の証を受け取った。



『その程度で良い気になって』



 ああ、また悪意ノイズが聞こえる。


 悪意が聞こえる度、お菓子の空き箱に砂を入れ、更に紙粘土で手作りしたミニチュアの人物、動物、乗り物なんかを入れて私だけの物語を作った。

 そこに必ずお城を入れた。

 私のシンボル。


 上手に出来たわね、それをみた大人が私を褒める。

 ありがとう、ツインテールを揺らしながら作り声で応える。



『そうやって言っておけば良いとでも思っているんでしょう』



 大人の姿が見えなくなると、出来上がった物語を床に叩き付けた。

 バラバラになったそれらを見て、私は感傷的になる事は無かった。


 浮いた言動が、周りから冷たい視線を集める。



『きっとワタシ、皆から嫌われている』



 学校へ行けなくなった私は、本当に白いお城に引き籠る事になってしまった。

 制服を脱ぎ、ふわふわのワンピースを来て毎日を過ごす。

 白衣を着た王子が側に来て、優しい言葉を掛けてくれる。



『心にも無いクセに』



 私はまた、箱の中に物語を作った。

 お城を中心に広がる物語は、穏やかで、温かで、悪意が無い。

 完璧だった。

 そして、また壊す。


 寝たフリをしている間に、誰かがそっと片付けにやってくる。



『まったく、何を考えているのか』



 今日も、今この時にも誰かが私の事を悪く言っている。



『きっとワタシ、此処から出してもらえない』



 悪意が、悪意が溢れている。

 ベッドから飛び起き、窓硝子を両手で叩く。

 叩いて、叩き続けて、そしてついに砕け散った、気がした。

 目の前にキラキラと細かな光が舞う。




 そう、また創れば良い。

 悪意の無い物語を。

 今度はもっと上手く出来る―――

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