第23話 包囲網


 アポロ市の市会議員選挙も終わり市長選挙から始まった一連の選挙もひと段落した。この結果中田派はアポロ市議員から一掃された。高杉を応援していた議員も牙を抜かれ全て小泉の軍門に降った。そんな中高杉は支援者廻りを再び始めていた。しかし選挙直後とは違い皆の対応が変化していた。「高杉さん。どうするのまだやるの」「もう自由党に居場所ないんじゃないの」「うちは自由党以外応援しないからね」「全く県議選なんか出なきゃよかったんだよ。そうすれば今頃議長だったのに」日に日に皆の態度も一線を引くようになった。中には居留守を使うものまで出て来る始末だ。これと同時に高杉にはやらねばならない事があった。一つは収入源を見つける事。そしてもう一つは営業停止にしてある会社の法的整理だ。こちらは弁護士に一任した。そして収入源を確保するためこれまで応援して頂いた企業廻りも行った。高杉は市内6社の企業で顧問を勤めていたのでその継続のお願いだ。「社長。選挙では色々お世話になりました。それで顧問契約なんですが引き続きお願いします」「いやー高杉さん。実はその件なんだけどね。ちょっと申し訳ないんだけど今月で打ち切りにして欲しいんだ」「いやっ社長。それは私も生活があるんでちょっと勘弁していただけませんか。まだまだお役に立てることは多々あると思います」「いやーうちも厳しくてね。何せこの景気でしょう。何とかミクス何て我々零細企業には関係ないよ。本当申し訳ないんだけど。選挙はこれまで通り応援するからさ。了承してよ」「そうですか。わかりました。又、お伺いします」

「こりゃー参ったな」高杉は次の企業を廻った。しかし結果は同じだった。

 翌日も企業廻りを行なったが結果は6社全てが契約打ち切りとなってしまった。「参った。これで当面の収入は0だ。しかし妙だな全部が全部妙なことを言っていたな」それは「うちもさー役所の仕事をやってるからさ」と言う言葉だ。「こりゃーもしかすると小泉が手を廻したのか」

 県議選直後小泉と渡辺は話をしていた。

 「よー高杉を支援していた企業はわかるか」「まー調べればわかると思いますよ」「よし。じゃー調べてくれ。できれば高杉の後援会のメンバーも調べられるだけ調べてくれ。2度と這い上がれないように徹底的に叩き潰してやる。俺に歯向かったらどうなるか皆んなにみせてやる」

 そう。既に小泉の手が全ての企業に回っていたのだ。

 「あー社長。市長の小泉です」「あっ市長ご無沙汰してます。どうしたんですかわざわざ直々に電話なんて」「いやー実はさ。社長の所は高杉を応援してたんだって」「えっまー古い付き合いですから。それが何か」「いやさー実は金輪際応援しないでくれるかな。社長の所も役所に指名参加してるよね。その辺汲んでよ」「あっそうですか。わかりました。今後ともよろしくお願いします」「もちろんですよ。じゃーよろしく」「はい。失礼します」「ふん。徹底的に潰してやる」「おい。渡辺。そっちはどうだ」「はい。個人はなかなか難しいですよ。でも青年会関係はほとんど手を回しました」「ほとんどじゃダメなんだよ。全部だよ全部」「はい。わかりました」「あとは町会関係だな。もしもし町会長。市長の小泉です。あのさー会長のとこ高杉応援してましたよね。もうあいつダメだから応援しないでよ。会長の町会も役所とネトワークないと大変でしょう。ねーそのへん汲んでくださいよ。ねっおねがいしますよ」「ヘッヘッヘッ。順調順調。死ね死ね」

 全くもって恐ろしい性格だ。

 日に日に高杉に対する町の方々の対応は冷ややかになった。小泉は大石にも「あー大石さん。大石さんの方から大正会のメンバーにさ高杉はどうしようもねー奴だって噂流させてよ。そうすれば各町会にも一気に出回るからさ。これで奴の息の根は完璧に止まるよ。よろしくねー。あーあと例の件楽しみにしててね。何せ億だから億」

 徹底的に高杉を潰す気だ。

 高杉の元にある支援者から電話が入った。「あー高杉さん。私から聞いたって言わないでよ。もう町中で噂になってるよ。高杉さんが女を囲ってて今手切れ金でもめてるだとか。会社を計画倒産させたとか。他にも色々ひどい中傷だよ」「そうですか。それって大正会のメンバーですかね出元は」「うん。多分そうだね。それと奴。八木だよ」「あーなるほど。わかりました。ありがとうございます」「まっ私から聞いたって言わないでね」「えー大丈夫です。すみません」

 「参ったなこりゃ。企業関係は小泉が手を回し、青年会は渡辺、町会は小泉と大正会か。ひどいもんだ。徹底的に俺を潰す気だな。上等だ。見てろ」

 しかし何処に行っても既に高杉包囲網は出来上がっていた。



   

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