第14話 2期目4

平成20年に入り1月10日突如訃報が舞い込んだ。小池が亡くなった。自ら命を絶ったのだ。静養を続けていた小池だが大分精神的にも安定を取り戻し復帰間近と聞いていただけに高杉は驚いた。どうやら再び嫌がらせが始まっていたらしい。何としても彼を復帰させたくない人間の仕業だろう。それに耐え切れず自ら命を絶ったと言うのだ。それにしても酷い話だ。普通の人間のやる事ではない。こういったことが罪に問われなくていいのだろうか。いいわけがない。葬儀はしめやかに行われた。遺体を前に高杉は「絶対に仇をとります」と誓った。

 完璧に小池は「排除」された。次は誰だ。田口か篠川か田原か松田か高杉か何としても食い止めねばならない。

 「シュッ。シュッ」高杉はシャドーをしながら今回の小池の事を思った。「小池さん。無念だったろうな。でも死ぬ事はないのに。やっぱり精神的に参るとあーなっちゃうのかな。何れにしても渡辺達は許せねーな。捕まんねーかな」

 その晩高杉はいつもよりまして酒を煽った。 

「結局。小池さんが死んで不正会計は闇の中か。参っちゃうな」高杉は篠川に電話した。「先輩。参りましたね小池さん」「本当だな。相当渡辺達にいじめられたみたいだな」「やっぱりそうなんですか」「奥さんも精神的にめちゃくちゃみたいだな」「何とかなんないですかね」「まったく酷い話しだ。我々だけでも頑張ろうや」「わかりました。失礼します」

 平成20年。2期生に議会運営委員長のポストが回ってきた。高杉は先の約束通りこのポストに就任した。アポロ市議会では議運の委員長経験者か副議長経験者でなければ通常議長に就任できない慣例がある。そういう意味でも大きなポストの一つだ。この年は翌年に統一地方選が控えた大切な時期だ。高杉にとっても3回目の選挙である。これまでの実績を踏まえそれ相応な得票で当選しなければならないと思っていた。そういう意味でもこのポストはありがたかった。

 しかし平成18年のリーマンショックを何とか凌いだものの建築業界の景気は一向に回復せず。当時の損失が尾を引きこの頃任せていた会社の経営が悪化。この噂は立ち所に広まり高杉は一気に逆風にさらされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る