第10話 1期目5

翌年平成15年5月中田市長の3回目の選挙が行われた。相手は再び共創党だ。この時は市議会議員の補欠選挙も行われ自由党からも候補者を出し又、民社党からも候補者が出た。中田市長は無所属で出馬し自由党、民社党、民生党からも推薦を受けていた。そんな事もあり両陣営から応援を受けた。結果、中田は圧勝。ところが市議会議員補欠選挙では事もあろうに自由党の候補者が敗れた。中田市長の根っこはもちろん自由党だ。その自由党候補者が敗れたとあっては自由党もやぶさかではない。自由党議員団は中田に抗議した。

「何故民社党議員の応援をしたんだ」「別に応援をした訳じゃない。私が民社党からも推薦をもらっていたのは皆さん百も承知でしょう。彼らも私を推薦している以上やはり何もしない訳には行かないでしょう。だから私の為にあちら側が人を集めてくれた。その場所に民社党の候補者がいた訳だから何もその方の応援の為に行った訳じゃない。あなた方も議員なんだからわかると思うけど応援してくれる人がそこにいたら行くのが当然でしょう。違いますか。それに今回の選挙に当たりあなた方は私に補欠選挙もセットでやってくれとは一言も言っていない。にも関わらず私の選挙カーの後ろにいつも市議選候補者の選挙カーが付いていた。そちらの方こそ一言位あっていいんじゃないか」中田も声を荒げた。「何れにしても今後は気を付けて頂きたい」小泉が言った。実はこの席に高杉も同席していて高杉が中田を糾弾し中田と高杉は決裂したと言う噂が流れた。これは完全なデマでありこのころから高杉に対する目に見えない嫌がらせが始まった。

 平成15年8月突然衆議院が解散した。所謂郵政解散である。時の大泉総理が郵政民営化に賛成か反対かを国民に問うた。結果は大泉自由党の圧勝に終わり新海ももちろん当選し復帰した。浪人生活はたったの1年9ヶ月。運のいい男だ。この選挙の選対本部長は自由党アポロ支部長小泉が務めた。小泉は勢いずく。このころからだ小泉が市議団に「地方議会は2元代表制だ。市会議員と市長は別物で対等なんだからどんどん意見を言わなきゃだめだ。遠慮するな」と言い始めたのは。確かに制度上その通りではある。しかし市長は常に我々自由党の人間である。立前はわかるが市長を支えて行くのも我々の仕事のはずである。言うべき事を言うのはもちろん賛成だが何やら物言いに敵対心が見え隠れする。どうやら中田下ろしが本格的に始まったようだ。

 翌平成16年は翌年に統一地方選を控えた大事な年である。高杉の地元では田畑が県議選に向け着々と準備を進めていた。しかし自由党執行部は田畑に対しなかなか公認を与えようとしない。当然と言えば当然だ。田畑の地盤の古川地区はこれまで小泉が県議選で地盤としていた大票田の場所である。ここを失っては自分が危ない。県議選の公認を出すのは最終的には自由党県連だ。小泉はここに徹底して圧力をかけ田畑の公認を阻止した。綱引きは続いていた。高杉は田畑が地元の後輩でもあるので田畑を応援する事にしていた。ところが10月に入り田畑は突然県議選不出馬。来年の市議選にも出ず引退すると表明。

小泉の圧力に屈したのだ。小泉は当時田畑の会社の状況が悪いのを聞きつけそこを突いてきた。関連業社、金融機関にその噂をまいたのだ。田畑は屈した。

 この田畑の行動は多方面に影響を与えた。地元の古川地区はもちろんだがお隣の神林地区でも既に田畑の推薦を決めていたのである。古川地区の自由党第1連合と第3連合の会長はこの責任をとり辞任。自由党アポロ支部常任総務会で「大変お騒がせをし、又ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした」と土下座までする有様だ。古川地区のムードは一変した。

 又、この年正式に矢幡市からアポロ市に合併の申し入れが行われた。しかしこの時中田はまだ前回の後遺症が癒えていないと言うことで拒否している。

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