第9話 1期目4

この年平成13年11月には衆議院選挙も行われた。この年は自由党に逆風が吹きアポロ市現職の自由党衆議院議員新海が落選してしまった。時の選対本部長はアポロ市自由党支部長前市長の永井だ。永井は責任をとり辞任し、新たに支部長に選ばれたのは小泉県議会議員だ。この時議員団では次の支部長は誰がいいかと言うことで珍しく皆に意見を聞いた。高杉は中田の考えも知っていたのでとりあえず「私は民間の方がいいと思います。やはり現職の議員はご自分の選挙があるのでちょっと控えた方が良いと思います。もし中田市長が受けて頂けるのであれば中立な中田市長がいいと思います」その他の意見を聞いているとやはり圧倒的に小泉支持が多かった。なんてことはない。いつもの根回し済みの大義名分作りでしかなかった。

 支部長代行には田口県議会議員が就任した。平成14年1月のことである。新体制で自由党アポロ支部は動き始めた。その中心は新海・小泉・渡辺・松井の4人だ。田口は支部長代行だが小泉とは犬猿の仲なので外されている。

 この平成14年は3市合併が破断した矢幡市と塚越市の市長選が行われた。塚越市では事もあろうに共創党の市長が誕生した。日本全国で唯一の共創党の市長だ。これで当面合併はなくなった。そして矢幡市は現職の名古屋市長と新人の村瀬が対決した。この村瀬はアポロ市との合併推進派だ。

 それに対し名古屋は前回の3市合併時の新市の名称を巡る採決で裏切った中の一人と言われている。驚いたのは自由党アポロ支部はこの名古屋市長を応援したのだ。矢幡市の公民館で行われた名古屋市長の個人演説会には新海、小泉を初め自由党川口支部の議員がこぞって応援に駆けつけた。もちろん高杉は行っていない。こういった事を考えると当時の3市合併の破断で暗躍したのが自由党アポロ支部だったと言うのもまんざらうそではないとうなずける。要は採決で反対票を入れてくれれば選挙を応援すると言う裏取引だ。「こいつらは全く市民の事や市の発展を考えていない。自分の事だけしか考えていない」更におどろかされたのはこの名古屋と言う男。事もあろうに「私はアポロ市との合併を進めます」と言ったのだ。もはや開いた口がふさがらない。「あの時もしこの男が裏切らねば塚越市も合わせ3市合併し地元古川地区のまちづくりも飛躍的に変わっていたはずだ。将来を考えれば取り返しのつかない損失だ。政治家のその場の判断でどれだけの市民が被害を被るか。絶対に私利私欲の政治家はダメだ」高杉は改めて実感した。

 結果、勝利したのは村瀬だ。自由党アポロ支部は赤っ恥だ。やはり市民をばかにしてはいけない。矢幡市民はきちんと見ていた。これにより村瀬はアポロ市との合併を進める事になる。形式は対等では無く吸収合併だ。矢幡市民は吸収合併でもアポロ市との合併を選択したのだ。

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