第3話 初登庁
中田初登庁の日は市役所正面玄関は人で埋め尽くされていた。皆んな未来のアポロ市に中田市政に期待を膨らませている。高杉も駆けつけた。中田を乗せた車が正面玄関に止まった。中田が車から降りた。「中田。頼むぞ」「おめでとうございます」「日本一」歓声と拍手。朝だと言うのにカメラのフラッシュが眩しい。選挙戦勝利の余韻は未だ残っていた。中田は花束を受け取り皆んなに手を振りながら市長室へ向かった。
こうして中田市政1期目がスタートした。
しかし選挙後も軋轢は残った。本来自由党は与党のはずだがもともと市議団は山口を推薦していたのだ。中田にとっては議会はオール野党の様なものだ。最初の1期目は議会対策に追われてばかりだった。自由党を出て行った議員の取込はもちろん。与党であるはずの自由党市議団の取込も行わなければならない。もちろん民生党もだ。中田の出す議案にはことごとく難癖がつけられた。外部の民間委員の選出にまで口を出し同意をしない事もあった。例えば教育委員だ。中田の選んだ教育委員はなかなか同意が得られない。まさか議場で否決される程、みっともないものはないので事前に根回しをするのだがこれがまとまらない。ことごとく反対された。当時はまだ自由党と民生党は手を組んでいなかったのでアポロ市の状況はと言うと自由党1党では過半数に達しない。先の市長選で自由党を飛び出したものがいるからだ。この飛び出し組みが民生党と手を組んだ。これにより自由党は弾かれた。議長が取れないのだ。中田もこの連中をないがしろにする事は出来ない。必死に取り込んだ。時間を見つけては各会派の代表者達と酒を酌み交わした。中田は酒豪で通っている。
人と打ち解けるには「10回のお茶より1回の酒だ」と言うタイプだ。ちなみに高杉も大の酒好きで一年365日酒をあける事はない。
そんな日々の苦労が報われ何とか議案もスムーズに通るようになったがやはり油断は出来ない。常に緊張感は保ってなければならない状況だ。
2年後の平成9年。市会議員選挙が行われた。この選挙で新たに自由党に加わったのが岩井、篠川、小池、早瀬、飯沼の5名だ。しかし議会の人数構成は変わらず自由党は過半数を取れていない。民生党とも手は組めていない状況だ。議場の雰囲気もそのままだ
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