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この子が生きながらえた原因として可能性があったのは、彼女の左腕上腕部に服の上から絡まっていた
その
水に関する魔結晶といわれる存在と言われる
その可能性を感じ取った私は、その首飾りをこの子の左腕へと直接括り付けておくべき処置をする。
しかしこれでもまだ足りない。
だが、これほどまでの
とにかく延命となる処置として、常備薬としている回復薬(と呼ばれる魔力が宿っている治療薬)を使用して処置を行うのだが、それでも酷い傷などには限界がある。
この回復薬には、患部に直接降りかけた際には痛みどめの作用も含まれる為、状況としては多少は良くなるかもしれないという淡い期待もあったが、いかに魔結晶と言われる類の物であろうとも痛みが和らいだ状況であろうとも、あくまでも対処療法な物でしかできない物であり、根本的な治療となる物ではない。
あくまでも自己回復を補助する事が主体となり、この状況からいまの手持ちでは治療によって根治する為の条件が少なすぎる、いや、まったく無い事という事も経験上理解してもいた。
特に火傷の場合、ほぼ炭となってしまったらその場所にはこの治療薬は役に立たない。何故なら、その炭になった部位には自己回復という機能その物が失われてしまっているためだ。
薬効が多少なりとも効いてきたのか、この子・・・いや少女の呼吸が荒くなり大量の汗をかき始めた。
「熱い・・・アツイよ・・・お母さん・・・」
少女からは時折、
気を失う直前の状況なのだろうか、それとも現状の状況の事なのかは定かではないが、ただ、目を覚ました際に自分の状況がいかなる物かをみた時、その心境はどういったものになるのか・・・。あまり深くは考えない方がよいだろう。
患部をみれば、自分が出来る"あたりまえ"の処置では完全には救えない、回復の見込みが無い部位は、早急に切除するという決断に迫られているのだが、この様な場所には適切な処置を行えるとは到底思えない。
ならば、処置が行える場所までと思うが、それでは間に合わないという事にもなる。
しかしながら、今はその痛みを和らげる程度の対処しか出来ない状況が歯がゆく感じてしまう。
「ん・・・」
今後の処置をどうするかと悩んでいた時、今までのうなされた物とは違う反応があった。もしかしたら少女の意識が少し戻ったのか?という確認をする為、
「しっかりしろ」
と、少女へと問いかけを行ってみる。その問いかけに対して、少女の反応が返ってくる。
多少なりとも痛み止めも利きだし、意識を取り戻してきたという所なのだろう。
「今、治療を施してるからな、安心して横になっていなさい」
目をうっすらとあけ、息を荒げながら少女はこう問いてくる。
「誰・・・?お母さんは・・・?」
少女の言うお母さんとは、推測をするに少女を護るかの様に覆いかぶさり、息絶えた女性の遺体の事だろう。
しかし、この場で本当の事を言う必要があるのだろうか…少しでもこの少女に生きる希望を与えるべきなのだろうか…現実を知れば、この少女はどうしていくのだろうか…
こうしている間にも、少女の様態は良くなっていくわけではない。しきりに左腕や左足に痛みを訴えてくる。
こんな時に少女の母親と思われる人だったものの現実を突きつけてしまえば、肉体的なものよりも、精神的な方から命の
そうこう考えているうちに、言葉を紡ぎだす事すら持ちえかった私には、急ぎ気休めかもしれないが火傷の箇所を水で冷やし、再び痛みを和らげる為に回復薬を降りかけて処理を行う事しか出来ないでいた。
多少は緩和した様だが、されども症状が良くなっている様には到底見えはしなかった。
「水だ、少しは飲みなさい・・・」
清水が入っている瓶を少女の口に当て水分を補給していく、時々息が弱まり、生気が弱弱しくなっている様をみせられると、この少女を看取る事が私に与えられている
「キミの名は…言えるかい?」
「セル…フィナ…」
弱弱しく彼女は答えてくれる。
自身の名前を伝える事が出来るという事は、少なくとも意識があるという状況でもあった。
「そうか…セルフィナ、いい名前だね。」
「オジサン?は誰?お母さんは?」
「オジサンは……旅人だ、キミのお母さんにキミのことを任されてね、その…」
嘘を付こうとしている行為に罪の意識が芽生え言葉を詰まらせ。何をやっているのだ、私は、少女に生きる希望を失わせてしまってどうするんだと、自戒をしていた矢先に、少女から私の想定しない言葉が紡がれた。
「やっぱり・・・お母さん・・・死んじゃったんだ・・・・・・」
私は目を見開いた。少女は現実をしっかりと認識していたではないかと、己の行おうとしていた嘘を付くという行為で少女に希望を持たせようとしていた自分に、とてつもない愚行を行おうとしていたという思いにかられた。
「あ、ああ、君のお母さんは、君を守る為に」
「オジサン…私も、お母さんの所に行ける・・・かな・・・?」
・・・言葉が詰まる。
この少女は賢いのだろう。そして状況をも理解し自分の状態から死というのを受け入れ始めている。
「それは…無理かも…しれないな…」
「私も…死んじゃ…うんでしょ?」
そういって、少女は自分の左腕へと視線を向ける。
藍玉が薄く光る左腕の先には、左手だった物が存在しているだけであった。
「これ…お母さんがいつも身に着けてた…」
「ああ、その首飾りのお蔭で、君はまだ無事でいられた」
二人の間に、静寂が訪れる。
しばらくして、少女は右手でその藍玉の首飾りを触りながら、涙ながらに「オガァザン」と連呼し涙をこぼし、時折、呼吸が苦しいのか、せき込む事もあったが、今は痛みを和らいでいるだけであり、根本のところは何も変わっていないのが状況であった。
そんな姿をみていた私は、自己満足なのかもしれないが、この少女を助けたいという衝動に駆られ始めていた。
しかしながら、それは少女の意思も必要であり、生きる事をあきらめた生者で行えば、生きる屍となってしまうのだから…
「いや、そうはならない、私がさせない」
「でも・・・」
「セルフィナ、君は…死んではいけない」
「えっ・・・?」
「キミのお母さんは…もう、いない。けれど、君に生きてほしいと願ったお母さんの思いはどうする?」
「お母さん……」
「その
少女は覚えているのかもしれない、その首飾りを託した者の言葉を。
私は卑怯者であろう、自分の自己満足の為に死した者を利用して少女を誘導しようとしているのだ。
しかし少女は、その言葉を聞いた後に藍玉の首飾りを反対の手でそっと触れて目を閉じていた。
「だから聞きたい。君は生きていたいかい?」
「…」
沈黙が再び小屋を支配する。
こんな小さな子までも死という概念を理解している。
この状況と、寒村という立地では、生活の中に死というものが密接につながっていたのかもしれない。
多少は落ち着いたのだろうか、こちらに顔を向け涙を浮かべるその瞳が私を射抜くかの様に見開かれながら、少女の口から言葉が紡がれる前に、突如として痛みから逃れるかのようにもがきはじめた。
それを私は一所懸命に抑え込み少女に叫ぶ
「セルフィナ!君を必ず助けてみせる!必ずだ!!だから、私を信じてほしい!そのお母さんの
回復薬を再び降りかけ、痛みを多少なりとも抑え込んでいく。
しばらくして、痛みが多少は引いたのか、少し落ち着き始めた少女から、その瞳から涙をこぼしながらも私の方を見つめ、そして小さく首を縦に振るという行為で返答を返してくれた。
その返答を受け取った私は、今度は私が覚悟を決める番である。
そう、少女やその少女の母親の願いを叶える為にだ。
「わかった。だから、今はゆっくりと眠りなさい。」
そう伝えた後に別の薬品を布にしみこませた物を少女に嗅がせる。
すると、少女はまるで安心したかの様にゆっくりと静かに眠りに陥った状況を待った。
麻酔と言われる薬品は、痛みすらも気づかせないといわれる。
これから行う処置は、少女の体を"治す行為"ではない。
少女の状態からみて、気管などにも炎症を起こしている可能性がとても高く、今の手持ちでは到底対処できる範囲から逸脱しているからだ。
こうなってしまっては痛みを和らげるなどの程度では到底治るものでもない。ましてや、この状態では少女を連れてまともな治療術が支える場所へ移動する事も不可能である。
ならば私は治療行為ではなく、"治療とは他の方法で少女を助ける行為"を行うだけだ。
静かでそれでいて小さく響く呼吸音に変わった少女の患部を少し強めにさわり、痛みによる反応が無い事を確認し、いつもの背負い箱に別枠として厳重に封をして保管していたある木箱を一つ取り出してはその封印を解いていった。
その封印されていた木箱の中から現れたのは、一握り大しかないいわば短剣という部類の刃が細い代物であった。
ただ、その短剣は自らが白銀の光を放っていた。
聖水にて短剣と共に手を洗い流し、そのままその白銀の短剣を握り大きく振り上げ、
トスッ――
勢いと共に、その白銀の短剣は少女の胸へと深々と突き刺ささっていく。
突き刺した瞬間、少女の体は反応するかのようにのけぞりはしたもののすぐに元の姿勢に戻り、胸に深く刺さった刃からは心臓に到達したのだろう、そこから真っ赤な血が流れだして少女の命の|灯(ともしび)を消していった。
彼女が携えていた藍玉(アクアマリン)を、その胸に刺さった白銀の短剣の傍に据え、少女の生命としての灯が消え去り、その活動を停止させた後に次なる行動へとうつる、ココからは時間との勝負である。
それは、私が生涯
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設定みたいな物
○
特定の宝石や宝珠などには魔力的な要素が含まれている場合が多く、例えば
他にも、
それぞれの効果は、その物の大きさや質に左右され、形状が大きく、純度も高くなる傾向があり、その分高価な物として取り扱われる。
ストロイェ zaq2 @zaq2
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