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 寒村にたどり着いて真っ先に目に入ってきたものは、焼け落ちた家々ばかりであった。

 それを予想はしていたのだが、現実であったという事をまざまざと見せつけられてしまっている事に、間に合っていればという憤りを覚えずにはいられなかった。


 いや、たらればの事を今更考えても仕方がない。まずは生存者を探す事が先決である。


 そう思考を切替え、それらの惨状に対する感情思考を意識からはずし、そのまま村の中央広間と思しき場所に出たとき、目を覆いたくような光景が再び視界に入ってくる。


 それは、死臭といわれる物の一つでもある、肉が焦げた臭いの原因となるものが無残にもいたるところに散らばっていたからに過ぎなかったからであり、「酷い」という言葉でしか表現する事ができなかった。


 「もしかしたら生存者がいるかもしれない」そういう楽観的な期待を持ち続けてはいるものの、この惨状を目の辺りにすると、その思いも多少なりとも揺らいでしまいかねない程であり、最悪の状況も考慮には含まなければならないという事を思いめぐらすには十分であった。



 目に見える"モノ"。

 焼けただれて身体からその皮膚が剥がれる様な恰好をしているモノ、ただただ形状だけが存在し黒い塊となっているモノ、広場の水場につかりはしたのだろうか、その中で浮かぶように息絶えたモノ、子を守るためか水桶をかばっているのだが、水桶すら燃え落ちてしまっている状況であり、その中にいたであろうモノは、その形を半分だけ保ったまま途絶えていた。



 それでも私は、"もしかしたら?"という言葉を綴る事で自身を奮い立たせ、家々を一軒ずつ確認する事にした。



「誰かいないか!誰か!!」



 叫び声をあげながらも崩れ落ちているとはいえ、その中にもしかしてという淡い期待をこめてはみるものの、聞こえてくるのは冷たい風が吹き抜け時に奏でる音だけ聞こえるのみであった。


 それでも、誰かしら生きているかもしれない。という願い、いや、期待?願望とでもいうのだろうか、そもそもこの様な惨状の中で感情というものがあったのだろうか・・・それすらもわからなくなってきていた。


 記憶が曖昧になりながら、家だったもの、家らしきものを一つ一つ探していっていたが、どの家々からは元は人だったという存在しか現れなくなっていき、何時しか声を上げず作業という形で行動をとる私がいるだけだった。




 ほぼ全ての家屋を家探ししたが、私が期待していた内容とはまったく異なる結果しか得られなかった状況が続き、すべての家屋を見回った後、憔悴しきった自身は村はずれに火災にまみれていない古ぼけた納屋と思わしき場所の前に立っていた。


 納屋は燃えてはいなかったが、天井は完全に朽ち果てている状態であり、この様な状態では中に人がいたとしても、圧死している状況でしかないのでは?という思いが出てくるが、それでもなお期待を込めてその扉だった場所の板をどけて中に入る。


 中を見てみるも、案の定といえばそれまでだが、倒壊していた小屋の中は天井が崩れている状態であり、その下敷きに見えているのはヒトであった物の一部の部位であった。


 ここも駄目か…、そう呟きながらもヒトだったモノの上に崩れ落ちている、元天井だった物をひとつづつ退かしていく。

 何も考えずに、何も思わずに、ただただ無心でひとつづつ退かしていくだけだった。



 ようやく二つの遺体を確認できるまでになったが、ふと、炎上もしていない倒壊しているだけの納屋の中で圧死しているにも関わらず。

 その体の一部は、まるで焼けただれたかの様に焼けた跡があった。また、その焼けた跡、否、その付近にはまるで水を被ったかの様に湿っている様な、そんな感覚が感じられた。


 よくよくみると、その遺体の下には少し段差が設けられてあり・・・その隙間を広げる様にさらに積み重なっている瓦礫をどかしていくと、そこから小さい人の手が動くのが見えた。



 「生存者か!」と、私は歓喜し、倒壊していた納屋の残骸を少しずつ、それでいて早急にと退けていった。こんな時、兵装機械ストロイェが使えたらとは思ったが、すぐさまその思考は置いておき、まずは積み重なっている物を退かしていく方が先決だと決め作業を続けていくと、この場合な何といえばよいのか、二つの遺体の下から小さな人、つまり子供と思しき姿が現れたのだった。



 しかし、その子供の衣服は焼けただれた後があり、またその四肢の一部はもう動かせれる状態でもないだろうというのが一目でわかるほどに酷いものでもあった。

 だが、かろうじて胸がふくらむ動作、つまり呼吸しているということが確認できた。その動きに、私は目を見張った。


 いや、とにかく早急に処置を施さなければならない。


 そう思った私は、この小さな子をあの惨状の中から抱え出し、少しでも雨風が多少は凌げる厩舎とおぼしき小屋につれこみ、藁の上に持参していた布を洗浄浄化を施してから載せその場所に寝かせた後、状態を確認するためにその焼けただれた衣服をナイフで剥いでいった。



 患部の状況を確認をしていく、薄く日焼けしている様な小麦色の肌に、所々焼け落ちてしまっていた銀髪、頭部や胴体にも多少なりとも火傷の後が見て取れるが、特に左半身の大腿部から下部の一部が広範囲において火傷が存在していたが、一番ひどい部位は袖によって隠されていた左腕、それは無残にもその機能を果たすという状況では到底いえる状態ではなかった。


 この様な酷い火傷では生命活動など出来る事は到底信じられなかった。


 何故まっさきに納屋を探さなかったのかと悔やんでしまう。処置が遅ければ遅いほど助からない場合があるのを私は経験上で知っていたため、この左腕から見える範囲の火傷の酷さから、状況は深刻であり早めの処置が必要であったからだった。




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