第一三話

 綺麗な紅葉も過ぎ、肌寒さを感じる一一月も過ぎ、一年の最後の月である一二月になった。世の中はクリスマスに向けて、日に日にムードを高めてきた。そして本日二四日は、そのピークが頂点にたった。

 今日はクリスマスイヴだ。今日は土曜日のため、駅前やショッピングセンターなどには、ちらほらとカップルが見える。多くの人は、今日や明日のためにレストランを予約したり、プレゼントを用意したりと今日のために準備してきただろう。

私もクリスマスに向けて、準備をしてきた。私はパートナーと出かけたいが、今のところその予定はないし、そのパートナーはいない。そのため、今年も香澄さんの店でクリスマスを過ごす予定だ。香澄さんのお店でクリスマス会兼忘年会を一九時からやる事になっているので、クリスマス会の準備のため開始時間の五時間前に着くように向かっている。

(今年も去年と同じか・・・)

 去年も香澄さんのお店で過ごしたが、今年は里恵もいるから楽しいに違いない。

「まぁ、一人で過ごすわけではないから、マシな方か」

 独り言を呟きながら店に向かっている。腕を組んだカップルが見当たり、自身の歳が気になった。

(そろそろ相手を見つけないと・・・)

 焦りを感じながら、駅から歩いた末に香澄さんの店に着いた。すでに来ている人も多く、美姫と千夏の二人も店の前にいた。

「あらっ、美幸ちゃん♪お久しぶり。美幸ちゃんも来てくれるなんて、お姉さんは嬉しい。今年は熱く、忘れられない二人のクリスマスを過ごしましょう♪」

(えー、この人も来ていたの・・・。いつも通りに私への態度は以前より悪化している。怖いよ・・・)

「あぁん!美幸、お前、来たのかよ。今年こそは絶対、里恵を渡さないわ!」

(そして、こっちも私への態度は変わってない)

 そして、三人で店内入った。

「あらっ、いらっしゃい」

「あっ、いらっしゃいませ」

 里恵と香澄さんは私たちに気付き挨拶してきた。

「珍しいわね、三人で来るなんて」

「お店の前であったのです」

 香澄さんは私たちが一緒にいる事を珍しく思い私に聞いてきたので、私は返答した。

「そういう事ね。さて、そろそろ準備するわよ」

 香澄さんと里恵は料理の準備、私と例の二人で店内の飾りつけをやった。当初は五人で準備する予定だったが、参加予定の常連三〇人が早めに来てくれたおかげで、人手が足り、一時間前に完了した。

「では、予定より早めに始めましょうか。いつも集まってくれて、ありがとう。今日はパァーと楽しみましょうか。では、みんなで開始の合図をしましょうか」

「ハッピークリスマス、乾杯ー!!」

 香澄さんの開会の言葉と開始の合図で始まった。オードブルとローストビーフ、サラダなどいろんな料理やドリンクが並んでいる。ケーキは常連の一人が勤めているケーキ屋のケーキで、特別に作ってもらったもので、サンタの砂糖菓子は里恵に似せてある。ケーキとドリンクの一部は常連の持ち寄りだが、それでもみんな持ち寄っていて、毎年消費しきれるかが問題になっている。

いつもの、あれがきた。

「美幸ちゃん~♪はい、あ~ん♪」

「いえ、大丈夫です」

「遠慮しないの♪」

 美姫が私にローストビーフを口に近づけてきた。

「あなたも、いい加減気づきなさいよ。今まで同じやり方で失敗しているじゃない」

「それも、そうだけど。私って、不利なほど燃える性格だから、絶対私に振り向かせる!!」

 千夏が美姫を叱った。

(美姫は大した勇気を持っているな・・・)

 それから、時間が過ぎ、二〇時になった頃にプレゼント交換が始まった。

「さて、みんなプレゼントを持ってきたと思うけど、プレゼント交換を始めるわよ」

 プレゼント交換は『みんなが持ってきたプレゼントに番号札を貼ったわ。順番にこの箱の中のクジを引く』となっている。

 里恵が箱を持って歩き、みんなにクジを引かせた。私もクジを引いた。

「では、みなさんクジの中を見て下さい」

クジを見ると『二五』と書かれていた。そして、そのプレゼントを手に取り、中を開けるとピンク色のコートが入っていた。美姫が声を掛けてきた。

「それは私のだよ。やーん、私のプレゼントが美幸ちゃんの手に行くなんて、幸せ♪」

「ははっ、それ私のです」

 私が持ってきたのはブランド物の手提げバッグ。

「私の手に美幸ちゃんのプレゼントが来るなんて・・・。もう、今日天に召されても良いかも」

(死んではだめですよ・・・)

 そして、里恵の方も同様に。千夏には里恵の、里恵にはその女性のプレゼントが行った。

(いつも里恵からもらっているし、今日くらいはこれで良いかも)

 この後、より盛り上がり楽しい時間を過ごした。二二時でお開きにした。参加者全員で片づけをして、二三時にはみんな帰って行った。私も早々に帰っていった。帰る前に例の女性から『美幸ちゃん、この後、空いている?せっかくだし、この後、私と過ごさない?』と言われたが、丁寧にお断りされた。

(過ごすのは良いのだけど、怖いから・・・)

 そして、アパートに着き、シャワーを浴びた。部屋に戻り、スマホのバイブが鳴り、里恵からメールが来た。

 内容は『今日はありがとうございます。もし、明日よろしければ、私と出かけてくれませんか』と書かれていた。私はすぐに『良いよ。ちょうど、里恵と過ごしたかったから。』と返信を打ち、送信した。すぐに里恵から『ありがとうございます。では明日、〇時に駅前で会いましょう』と返信が来た。

 私は里恵と二人きりでクリスマスを過ごす事に胸を驚かせて、眠りについた。

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