第一四話
今日も世の中はクリスマスムードでいっぱい。昨日、二四日がクリスマスの前夜にあたる。前夜祭や本夜祭だからといって、ムードに差は無く、二四日の時点で世の中のクリスマスムードはピークに達している。
(みんな、幸せがいっぱいだし、私もクリスマスを楽しまないと)
以前、里恵と映画を観に行く時に待ち合わせ場所と同じだが、その時と変わらず、また昨日と同じように駅前には人で埋め尽くされている。ここに来る前にコンビニに立ち寄ったが、店員さんはサンタのコスチュームをしていた。
(みんな クリスマスを満喫しているのだね)
今日は里恵と出掛ける予定。
(去年は自慢の後輩が『クリスマス直前になって彼氏に振られた!!』と嘆いていて、後輩の家で一晩飲み明かしたな~)
私は心の中でクリスマスに対する想いを浮かべながら、里恵に指定された待ち合わせ場所にいた。そうこうしている内に里恵が来た。里恵の服装は上下白色で、ニットワンピースの服装、ニット帽。私は昨日手にいれられた薄ピンクのコート、上は白色のタートルネック、下は濃い色合いのジーンズにしている。
「すいません、お待たせして」
まだ待ち合わせ時間二〇分前だが、里恵は先に着いた私を待たせた事で謝った。
「そんな事はないよ。乗る予定より早くに家を出ただけだから」
少々嘘っぽいが事実だ。スマホの時計がエラーを起こし、時間を一時間早く表示されていた。そういう事で早くに着いてしまった。里恵には事情を話した。そうしたら、里恵は『美幸さんのスマホもクリスマスで浮かれていたんですね』と言った事で、二人でくすりと笑ってしまった。
「ここで話すのもなんですが、歩きながら話しましょう」
そういって私の手を引っ張った。
(今日のエスコートは里恵に任せよう♪)
「今日はどこに行くかは決まっているの?」
「○○のショッピングセンターでイルミネーションがありますので、そちらに行こうと考えています」
「雑誌やテレビに取り上げられているイルミネーションだよね」
「そうなのです。ぜひ、美幸さんと見たかったのです」
そして、例のイルミネーションのあるショッピングセンターに着いたが、有名ともあるだけに人が多い。
(見られるか不安だし、はぐれそう)
「私についてきてください」
人の多さに圧倒され不安になった私を里恵は小声で言い、私の手を引っ張った。ついていった先には人はいたものの、先程より少なくイルミネーションを見るに絶好な場所だ。夢の中にいる気分で時間を忘れてしまう程に綺麗で鮮やかだ。里恵も私と同様に、子どものように、イルミネーションに見とれていた。
見とれている内に時間が過ぎた。その時、私は左腕の違和感に気づいた。強く抱き締められた感覚。私は自身の左腕を見ると、自身の左腕が腕組みをされていた。腕組みしたのは、里恵だ。里恵は上目遣いで私を見ている。それまで動いていた思考回路が一気に停止した。
「美幸さんにお伝えしたい事があります」
上目遣いのまま、里恵は私に言った。
「うん・・・」
私はこの状況に緊張しているのか、里恵の目を見ることができず、返事した。ショッピングセンターを出て、人目の付かない場所を探した。意識していないにも関わらず、以前来た公園に着いた。里恵は公園の隅にある茂みに、強く私の腕を引っ張っていった。里恵は茂みに入ると、すぐに口を開いた。
「香澄さんに伝えたい事があります」
私自身、鈍感ではないので、今置かれている状況を理解している。
「私も里恵に伝えたい事があるの」
真剣な眼差しで返事をした。
「美幸さん、お互い『せーの』で言いましょう」
「うん、分かった」
「じゃあ、行きます。せーの」
「美幸さんの事が」「里恵の事が」
「前から好きでした」
それは驚くほどに息が合い、驚くほどに同じ内容だった。
「美幸さん・・・」
「里恵・・・」
「まさか、里恵は私の事が好きだったなんて・・・」
「そうですね。お互い、もっと早くこの気持ちを伝えておけば良かったですね」
「里恵、見て。雪よ」
子供ように はしゃぐ私。そして、里恵ははしゃぐ私の背中に抱き着いてきた。
「美幸さん・・・」
私は里恵の手に手を置いた。私と里恵は向かい合い抱き合った。
「これからも、よろしく」
「これからもよろしくお願いします」
そして私と里恵はキスをした。それも長く、時間を忘れてしまうほどに。静かで心地よい時間が流れた。
私は『あぁ、この子と結ばれて良かった』と思った。
この日の夜、里恵は私の家で泊まっていった。
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