売り出しなんて行事もあります

 三十日の午前中に売り場を掃除したら、仕事がなくなった。客は入って来ないし、商品だって入って来ない。終わったと思ったら帰っていいよ、なんて言葉に後押しされて、さっさと帰ることに決めた。

「連休の売り出し、準備進んでる?」

 松浦の言葉に足を止め、顔を見返した。

「売り出し、ですか?」

 確かに階下には告知のポスターが貼ってある。伊佐治二号店、大売り出し。


 美優の感覚では、大売り出しってやつは季節物の入れ替えの時期だとか賞与の前だとか、とにかく手っ取り早く商品を現金にってな時期なので、ポスターは眺めただけだ。作業服売場の商品はほとんど定番だし、それに向けて商品を用意しろなんて指示も出されていなかった気がする。

「二階も何かするんですか?」

「何かするか、じゃないよ。告知してるでしょ? それとも自分に関係ないと思ってた?」

 ここで思ってたとか言えない。指示がなかったから考えませんでした、なんて言ったら自覚の問題だと叱られる。

「あ、いえ、先月のカーゴパンツを出そうかな、と。あとは二階で余っているものはありませんから、年明けにメーカーさんから出物でも」

「新しく仕入れろなんて言ってない」


 ちょっと待て。まだ在庫の少ない売り場で、新しく仕入れもせずに何を売り出せと言うのだ。

「え、でも値引きできるものなんて、ないんですけど。まだ防寒服は安売りするの、もったいないですし」

「二階の商品が全部動いてる商品ってことじゃないでしょ? 動かない商品とか廃番になってもあるやつとか、そういうのを工夫して売っちゃって」

「値引きしてもいいんですか?」

「処分コーナー作って原価割らない程度に引いてもいいし、インナーとかとセット販売してもいい。二階は任せてるんだから、自分で考えて」

 それを今から休みに入る人間に言うか。仕事はじめは五日で、その週末には売り出しである。松浦が忙しいのはわかっていて、告知が貼ってあったのも知っている。けれど自分に関係のある事柄なら、当然指示はあるものだと―――! その前に、自分は日曜日は休日のはずだ。

「えっと、私、その日は休日出勤するんですか?」

「去年もそうだったでしょ? 責任者なんだから、開店前準備もあるから」

「去年、私はいませんでした……」

 そこでやっと、松浦は驚いた顔になった。


「去年、いなかったっけ?」

「入ったの、四月です」

 もう一年以上いるのだと誤解に基づいた、中途半端な前振りだったのだ。松浦も、少しバツの悪い顔になる。

「まあ客の大抵は電動工具目当てだし、二階は付け足しみたいなもんだから。工具メーカーさんたちがたくさん来るから、朝から忙しいよ。年明けに売り出し用のレイアウトにして、目玉をいくつか出してね」

 松浦がそう言ったとき、客が入って来た。いらっしゃいませと大きく声を出し、話が終わる。

「何にせよ、年明けだね。良いお年を」

 お先に失礼しますと挨拶をして、自転車の鍵を握る。年の最後に思い残すことどころか、新たなる懸案事項を投げつけられた気分だ。


 自転車の上で、大きな溜息をひとつ。やっぱり辞めちゃおうかな、小売業だってもっと気楽な仕事もあるはずだよね。ノルマも持たされず過剰仕入れの罰則もない伊佐治は、実は結構緩い。アルバイトだとしてもフロア責任者である以上は、利益向上に貢献しなくてはならない。売り場に立って品出しをするだけなんて、はじめから言われていない。責任者をしろと言われたのだから。

 軽く言われたからって、軽く考えて良いものではなかったのだ。親戚だからっていっても、叔父は現場にはタッチしない。もちろん時々は売り場を見に来たりはする。けれどそれは長い勤務時間のほんの一時だ。叔父が見ていない時間に、美優が何をしているかなんて気に留めていやしない。じゃあ、誰が自分の働きを認めてくれるっていうんだろう。


 帰宅すると、父親が換気扇を外していた。大掃除用の手袋やらウエスやらを売ったのに、世間様が大掃除中だっていうのはすっかり忘れている。休憩したら自分の部屋の窓くらい拭きなさいなんて母親に命じられて、イヤイヤ頷く。

「兄ちゃんだって大掃除してない」

「兄ちゃんは仕事でしょ。あんたはもう休みじゃないの」

「私だって仕事してきたんだよ」

「兄ちゃんはあんたの倍、家に生活費を入れてます。同じ権利を主張するんなら、同額請求するけど?」

「スミマセン。金銭で貢献できませんので働きます」

 もう母親に正面切って反抗するほど子供ではないし、不当な言いつけじゃないから仕方ない。


 夕方になって、これから行くなんてメッセが来て、忘れていたもう一つのことを思い出した。土産が云々と昨日にメッセがあったのだ。

 もう帰宅してしまったので店にはいないと返事をすれば、間髪入れずにまた着信だ。ヒマだなぁと呟きながらも、とても良い気分なことに変わりはない。自分は忘れていたのに鉄は覚えているってことが、何かの優位に立ったみたいだ。次の機会でも良いとメッセしたが、本当は会いに来ればいいのに、なんて。


 前に神輿を担いだ神社の年越しで、鉄は大晦日も地域活動らしい。来年になっちゃうのもナンだし、あとでちょっとだけ出て来いなんて言い分に、思わず口許が緩む。

 やだな、私ってこんなに単純だったっけ。



 夕食少し前の六時、美優は約束のファーストフード店に座っていた。少しばかり空腹でハンバーガーを頼んでしまいたいところだが、そこはオトメとしてぐっと我慢しておく。出る間際に母親が、鶏のクリーム煮を仕込んでいた。ハンバーガープラスそれでは、カロリーオーバーに過ぎる。

「よ、悪いな」

 現れた鉄のトレーには、ハンバーガー二つにポテトの大きい箱、冷たいドリンクにデザートの満艦飾。

「あれ? 今日はおばあちゃん、お留守?」

「いるよ。おせち作ってるから、晩メシは多分煮物」

 美優の視線は盛り上がったトレーから離れない。夕食のメニューを予測してるってことは、これ以上に食べるってことか。

「それ、おやつにしては多すぎない?」

「余裕だろ。ポテト食っていいよ」

 ハンバーガーの包みを毟りながら、鉄の口はもうかぶりつく準備をしていた。


 ひとつ目のハンバーガーを腹の中に収めた後、鉄はやっと持ってきたバッグの中身をテーブルの上に出した。

「何これ可愛い」

 可愛いポップな水玉模様の箱の中身は、サイダーらしい。

「地酒じゃなくて、地サイダーだって。その箱、みーが好きそうだよなあって。あと、酒バウムクーヘンだって。一緒に行った女の子たちが買ってた」

 一緒に行った女の子? ちょっと引っかかって、複数形だってことを抜かした。男ばかり何人かで一台の車に乗り込んで行ったのかと思い込んでいたけれど、違うのか。

「何人くらいで行ったの?」

「全部で九人。男が六、女が三。いつもの面子だよ」

 いつもの面子とか言われたって、美優はその内容を知らない。仕事で仲良くなってプライベートでも近くなって、家も親も知っていて。すっかり知っているつもりになっていた目の前の男には、まだ美優が知らない生活がある。それに気がついた瞬間、頭にかあっと血が上った。

 私にとって、てっちゃんって何? てっちゃんにとっての私って、どういう位置なの。


 口には出せないまま、日帰り旅行の顛末に相槌を打つ。帰りに温泉に寄ったなんて話を聞いて、理由もわからず寂しくなる。

 それ、女の子も一緒だったんだよね? その中にもやっぱり、一緒に食事したりてっちゃんちで花火見たりした子がいるんじゃないの?

 こんな風に考えながらじゃ、向かい合わせで冗談を聞いてもちっとも楽しくない。鉄のお喋りに合わせた自分の笑いが空々しくて、早く帰りたいと思う。

「そろそろ晩ごはんだから、帰らなくちゃ」

「お、もう七時になるか? じゃ、帰るか」

 まだいいじゃないかと引き留めて欲しくて、けれども帰ると言い出したのは美優で。

「また来年、だね」

「明日の晩、お焚き上げに来れば? 餅と甘酒、配るぞ」

「寒いから、やだ」

 ファーストフード店の横に停めた自転車の前で、そんな話をして別れた。


 年末のうるさいテレビを眺めるのに飽きた美優は、自室でスマートフォンを弄りまわす。鉄から受け取ったサイダーは冷蔵庫の中だが、入っていた箱を捨てるのが惜しくて部屋に持って入った。淡い水色に白の水玉は爽やかで、好きそうだと思ったってことは、買うときに美優の顔を思い浮かべたのだろうか。

 もしかして私以外の知り合いの女の子にも、気軽にお土産配って歩いてたりして。なんで今まで疑いもなく、自分だけを食事に誘ったりしてると思い込んでたんだろう。男といるときのほうが楽しそうな顔してるからって、別に女が嫌いなわけじゃないって知ってたのに。

 ぐるぐる回ってしまう感情に、我知らず憂鬱になってくる。自分の能天気さが腹立たしくて、枕に拳を打ちつけてみたりする。何度目かの溜息を吐いたとき、スマートフォンが軽やかにSNSのメッセ着信を告げた。


 メッセは女友達からのもので、期待してしまったオレンジ頭のアイコンじゃない。そして彼氏と浦安のテーマパークに行ったなんて報告は、どうでもいい。ものっすごく面白くない気分でスマートフォンを投げ出し、風呂場に籠る。気に入っているバス香油を落とし、好きな音楽を流し始めたところでダメ押しが来る。

「風呂場で音楽なんか聴いてんじゃねえ! 企業戦士のお兄様が明日も仕事だって入浴待ってんだ」

「うるさいスケベ! 脱衣所まで入って来ないで!」

「スリーサイズ均等の奴がスケベとか騒いだって、誰が同情すると思ってんだ。そんなもん見る奴に失礼だろ。四の五の言わずにとっとと出ろ」

 風呂場までリラックスできる場所じゃない。甘い香りのバス香油を兄に台無しにされた分、余計に腹が立つ。


 どうしよう。私、自分で思ってたよりずっと、てっちゃんのことが好きみたいだ。てっちゃんの普段の遊び相手に女の子がいるってだけで、こんなにグラグラしちゃうほど気にしてたんだ。自分がワンノブゼムだって想像すらしなかったなんて、なんておめでたいんだろう。

 てっちゃんが仕事の後誘いに来たりするだけで、私からアプローチなんてしたことなかったかも。みんなに同じことをしてるんだとしたら、差別化しないとその他大勢の中に紛れてしまう。私の勝負どこって、何だろう。スリーサイズ均等のプロポーションとか高校生みたいな顔じゃなくて、てっちゃんが私だけをクローズアップしてみてくれるとこ。

 そんなことを考えながら、夜半を過ぎて十二月最後の日がはじまった。

 

 朝遅く起きて冷蔵庫を開けた美優は、三本あったサイダーの瓶が二本になっているのを見た。両親が冬にそんなものを飲むとは思えず、犯人は自ずと絞られてくる。

「兄ちゃんは?」

「仕事よ。金融って大晦日まで大変よねえ」

 母親が豚肉の塊にネットを被せながら言う。大した正月仕度はしない家だが、それでも日持ちする煮物や焼き物が食卓の上で冷めるのを待っている。

「あいつ、私のサイダー勝手に飲んだ!」

 小学生みたいな言いつけ口調は情けないが、子供っぽくいられるのは妹の特権だ。

「いいじゃないの、また買ってくれば」

「お土産にもらったのにー。三本しかなかったのに」

「三本もあれば、一本くらいいいでしょ。ケチくさいこと言ってないで、自分のカーテン洗っちゃいなさい」

 ぷっとむくれて、インスタントコーヒーに湯を注ぐ。確かに一本くらいのサイダーで言い立てるのは、大人気ない。

 だけどあれは、てっちゃんが私に買ってきてくれたものなんだよ。それを断りもなく飲んじゃうなんて、ひどいじゃないの。


 元旦には友達と初売りに行く予定だし、親戚めぐりしてお年玉をもらうなんて卒業しちゃったから、あんまり年末年始の実感はない。僅かに掃除した自分の部屋と、忙しそうな母だけが年末だ。洗濯の終えたカーテンを吊るすと、濡れた布で部屋の湿度が上がった。

 お正月が嬉しいのなんて、テレビの中ばっかりじゃないの。いつもと全然変わんない。仕事が連休になって嬉しいだけで、街に出ればちょっと飾り付けが派手なだけのバーゲンセール。彼氏ができないまま迎えた、二十一歳のお正月。年が明けてすぐ、二十二歳になっちゃう……え? 私、もう二十二になっちゃう? なんか重要項目が飛んでる気がする。私の恋と青春、どこ行った。


 夕方になってきたらしい。母親が揚げたてんぷらを大皿に盛っていると、テレビの中は大晦日の番組進行だ。鉄はもう、神社に入って初詣の用意をしているのだろうか。それとも家で新年の仕度を手伝っているのか。職人を束ねている家のお正月ってサラリーマン家庭と違うのかな、なんて考える。

 やだもう、気がつくとてっちゃんのこと考えてて、本当にイヤ。バカみたい、何にもないのに。


 町内会の青年部って、女の子もいるのかなあ。それでやっぱり寒い中で、一緒にお餅配ったり甘酒掻き混ぜてたりするのかな。そんなことを一緒にすれば、仲間意識が強くなるのは当然だよね。でも、それって何かズルくない? 私はその場にいられないんだから。

 気がつけば考えるのは埒もない繰り言ばかりで、そんなことに熱中しているうちに大晦日番組はどんどん進んでいく。頭の中に鉄と女の子が寄り添って甘酒を飲んでいる光景が出てきたとき、美優の頭の中の冷静な一部分が、こっそりと囁く。確認してくればいいじゃん。年越しの神社なんだから、人混みに紛れて見てくれば?


 行っちゃえ。自分の声に背中を押されて、スニーカーを履く。SNSで友達から誘われて年越し参りに行くなんて理由をつけるのは、簡単だ。ひとりで夜道を自転車で走る心許なさと、鉄に見つけられたいのと見つからずに覗き見したいのとの相反した期待で、胸がドキドキする。大したことをしているわけでもないのに、ひどく大胆なことをしているような。


 十一時を過ぎて火を焚き始めた神社の参道には、もう持ち込んだ札をくべる人たちがたくさん入ってきている。参道から離れた場所に指定された自転車置き場も、美優が考えていたよりも混雑していた。これなら見つからないと、安心して落胆する。どちらにしろ、現状は変わらないというのに。

「テツの彼女じゃねえ?」

 後ろから声を掛けられて、飛び上がりそうになった。振り向けば、忘年会のときに斜め前に座っていた顔の気がする。防寒着の上に町名の入った法被を羽織っているところを見れば、彼も青年部での活動なのだろう。

「彼女じゃないですっ! お餅配るって聞いてっ!」

 なかなか情けない理由だが、この際言い訳がない。

「つきあってんでしょ。スノボでも、嬉しそうに土産買ってたし」

 あ、つまりお土産は、配って歩いたわけじゃないってことか。

「テツなら誘導係だから、ヤグラの上だと思うよ。下から声掛けてみ?」

 すっかり鉄に会いに来たことにされ(間違いじゃない)その場で頭を下げて、参道に向かう。


 ヤグラなんて、盆踊りでもあるまいに。そう思いながら参道を進むと、もう年明けを待って並んでいる人たちがいる。ヤグラと言うよりは足場を組んだ低い物見台だが、その上に目立つオレンジ頭が浮いている。パーカーの上に、やはり町内会の法被。参道に並んでいる老人と、大声でやりとりしている。

「ほら、もうじき寺で除夜の鐘打つから、そしたら境内に入れるって。焦んなよ、年越しゃもっと老い先短くなるんだから」

 口は悪くとも話し相手も笑っているのだから、これは冗談なのだろう。楽しそうに交わされる会話を、まわりも微笑んで見ている。

 かっこいいな。素直にそう思った。年齢の違う人と大声で会話し、気負いもなく地域活動を楽しんでいる鉄が、とても素敵に見えた。


 やばい、頭が感情に追いつかない。てっちゃんが今までより、ずっとかっこよく見えちゃう。やっぱり来るんじゃなかった。だって見てるだけで、こんなにドキドキする。

 参道の隅で顎までマフラーを引き上げ、美優は鉄を見ていた。


 年が明ける十五分前、近くの寺から除夜の鐘の音が響いてきた。持ち場交代をするのか、ヤグラの下から声をかけられた鉄は元気良く飛び降りて、他の人間が代わりに上がっている。参道の入り口に張った縄が外され、夏に神輿が揉んだ急階段を人々が登っていく。足場が悪く暗い階段を、先頭で駆け上がっていくオレンジ色の髪が、境内からこぼれてくる灯りに薄ぼんやりと見えた。

 そのまま引き返すのもおかしな気がして、美優も初詣の人の波に乗る。町内会の法被も老人との軽口も、美優の知らない鉄だ。考えてみれば、急階段を一気に駆け上がる脚力だって知らない。草野球はお遊びだったし、厚い肩で鉄骨を担いでいると頭で知ってはいても、見たことなんてない。


 だんだん、扉が開いてく。口が悪くて無礼なだけだった客が、面倒見と気風の良い男で、けれども結構な甘ったれで。こうやって少しずつ、知ってきたんだ。

 こうやって少しずつ―――好きに、なってきたんだ。

 本人が自覚するよりはるか前に種がこぼれ、芽吹きも知らずに育っていた。気がついたときにはすくすくと育ち、アスファルトを割る雑草みたいに枝葉が外に飛び出してきて存在を主張する。出会ってすぐにこの人だと決めるばっかりが恋じゃない。沁み込むように始まる恋だってあるのだ。

 気がついたら好きで、こんなに好きで。自分で気がつかなかったなんて。


 階段を一歩一歩踏みながら、神社への新年の挨拶じゃなくて鉄のことばかり考えていた。口の利き方が乱暴でも甘ったれでも、そんなことは関係ない。全部ひっくるめて鉄で、きっと一番重要なのはそこなのだ。

 そんな風に考えながら賽銭を投げ込んで柏手を打ち、順路通りに裏に抜ければ参道を戻るだけだ。本当に遠目で見ただけだったなと半分安堵しながら歩いていると、後ろから首に腕がまわった。思わず悲鳴を上げれば、目の前には見知った顔がある。

「何、ひとりで来たの?」

 クロス職人だと言っていた女の子が、にこにこしていた。

「早坂なら、社殿の中にいるよ。一族三代で祈祷受けてる。もう出てくるんじゃない?」

 参道を駆け上がったのは祈祷を受けるためだったのか。怪我や事故の多い職場ならば、神頼みも真剣なのだろう。

「別に、会いに来たわけじゃないし……」

 言い訳しようと考えながら、差し出された甘酒のカップを受け取る。彼女はそこの担当らしいが、女の子は外に見当たらない。

「まあ、ちょっと待っててよ。私も美優ちゃんに聞きたいことがあるんだ」

「え? 何?」

「作業着のことなんだけどね。この前SNS繋ぐの忘れちゃったから……ごめん、ちょっと待ってて」


 鍋から掬った甘酒を配っている人の邪魔はできない。ペアで動いている人がいるとはいえ、持ち場は持ち場だろう。この後の用事があるわけでもなし、何時間も待っていろと言われたわけではないから、待っているのは構わない。ただできれば、何故ひとりで来たのかとは突っ込まないで欲しい。

 社殿から数人が束で出てきて、その中にオレンジ色の髪がないことを確認する。早坂興業の祈祷はまだ終わっていないらしい。ちびちびと甘酒をすすりながら、実は戦々恐々としていたりする。その間にも甘酒は注ぎ足され、それほど大きくない神社なのに人の波は引かない。


「みー坊ちゃん、初詣?」

 あまりの手持無沙汰に一緒に甘酒を配りはじめたとき、早坂社長が顔を出した。

「あけましておめでとうございます!」

 慌てて頭を下げて、隠れそびれた。

「町内じゃないよな? 手伝ってくれてんの?」

「いえっ! お餅もらいに!」

 もう、情けない言い訳でいい。早坂社長に手で呼ばれた鉄が、こちらに向かって歩いてくる。逃げるわけにいかない。


 新年の挨拶をして、鉄が防寒着でなくパーカーの上に法被を着ていることに驚いた。今更ながら自覚した気持ちを誤魔化すために、顔はかなり固まっている。

「ん、どうした? 新年早々のいい男だろ」

 美優の口数の少なさに、鉄が軽口を叩く。場を取り持つためにおどけることができる程度に、鉄は大人だ。だから美優だって、負けていてはいけない。普段の調子を戻さなくては。

「薄着だなあと思って。血の気が多すぎて、体温高いの?」

 そう訊ねると、頭に小さくゲンコツが乗った。

「自分で売ったもん、忘れんなよ」

 クロス職人の彼女の質問も、同じものだったらしい。

「確かにいいわ、これ」

 鉄がパーカーの腹をぺろんと捲ると、確かに見覚えのあるインナーが見えた。


 防風生地で更に蓄熱加工してあるから、厚いブルゾンを着なくても極寒の場所じゃなければ大丈夫だと、そう言って販売した。メーカーの受け売りだけで、自分で試したわけじゃない。冬前にまとめて仕入れたものを捌きたくて、鉄にも勧めた記憶はある。

「スノボに着てったら、汗かいたくらい。いろんなヤツに言ったから、どこで売ってんだって訊かれた」

「そうそう! 私も欲しいの。美優ちゃんにサイズとか在庫とか教えてもらおうと思って……はい、甘酒でーす」

 そうか、商品って売れればおしまいじゃないのか。それを身に着けて気に入った人が、リピート買いをしたり口コミで広げたりする。それには気がつかなかった。


 大きくはない神社でも、三十分やそこらじゃ参拝客は引かない。鉄も持ち場に戻らなくてはならず、訊ねられたことに答えれば、そこに留まる理由はなくなる。

 送ってもらえるとか、もう少し長く話せるんじゃないかとか、そんなこと期待してはいけないのだ。美優が勝手に来たのだから、勝手に帰れば良いだけのこと。寂しがるのなんて、我儘な感情だ。その場を立ち去りたくなくてウロウロしていたって、ただのヒマ人だと思われるのがオチ。

「じゃあね、売出しまでにMサイズ確保しとく」

 笑顔でそう言って、参道の階段をトボトボ降りる。こっそり様子を窺うどころか、顔を見て言葉を交わしたっていうのに、今のほうが寂しい。

 仕方ないじゃない、別につきあってるわけじゃないし。そうしたら、てっちゃんと私ってやっぱりただの友達なのかあ。


 階段の一番下で、鉄に捕まった。

「ひとりで帰んの?」

「うん。自転車で来たんだもん」

「何か音の出るもん、持ってんのか」

「音? スマホ?」

「じゃなくって、咄嗟のときに声出せねえんだろ、女は!」

 強い口調に、何か怒らせるようなことをしたろうかと怯えた美優は上目になる。

「これ咥えて帰れ」

 渡されたのは、金属製のスポーツ用ホイッスルだ。

「何、これ」

「サッカーの審判に使う笛」

 そんなことは、見ればわかる。

「とんでもねー参拝客がいたときの、合図用に持ってんだ。こっちは人手もいっぱいあるし、俺くらい持ってなくても問題ない。何かあったらそれ吹いて、相手が怯んだ隙に逃げろ。女ひとりで裏道じゃ、危な過ぎだろ」

 そう叱られて、女の子扱いしてくれているのだと気がつく。いつから女の子扱いされるようになったんだろう? 忘年会のときには、すでにそうだった気がする。


「ユカちゃんとか、他にも女の子はいるじゃない」

 クロス職人の彼女の名前を出してみる。

「ああ、手が空いたら手分けして送るんじゃね? 女は先に帰しちゃうし、知らないけど」

 知らないけどってことは、鉄は個人的に美優を気遣ったということだろうか? また浮いてくる気持ちを宥めて、いつまでも邪魔してはいけない役目の場所から離れた。

 なんか、嬉しい。こんな小さいことで、嬉しい。浮き沈みの激しい自分を、どうしていいかわからない。自転車を開錠して、言われた通りにホイッスルを首から下げた。鉄の心配を、首からかけた気がした。



 明けて元旦、家族との挨拶もそこそこに(兄はまだ寝ていた)美優はショッピングに飛び出す。数量限定の福袋を逃してはならないし、新年特価のコスメだってあるのだ。着ていくアテはあるのかとか誰に見せるのかとかのツッコミはさておき、女の子なんだから自分が可愛くしているって想像だけで嬉しい。かなり一生懸命に散財して、やっとランチに辿り着く。

「あと、どこ見る?」

「あ、スニーカーも欲しい。仕事用のやつ、ちょっとヘタってきたから」

 女の子らしい簡単なランチで、また戦場うりばへ赴く。綺麗になりたいって欲の重さは、財布の軽さと反比例しちゃうのだ。


「ねえ、なんでいちいち靴の先押してみるの?」

 美優の無意識な動作に、疑問が出たのは無理ないだろう。スニーカーを選ぶ際に、先芯(入ってるわけない)の大きさを確認するクセがついてしまっているのだ。

「職業病……?」

「って、美優が質問してどうすんの。作業着屋さんって、そうやって靴見るわけ?」

 これは少し返事に困る気がする。こんなことが習慣になってるなんて、仕事が身体に染みついてるみたいじゃないか。実際は染みついてしまっている気がするが、作業服のイメージはオシャレじゃない。

「ああ、わかるー。私、どこに行っても犬とか猫とか書いてある看板、見つけるもん」

 動物看護士実習生の友達が口を挟んでくれて、ちょっと安心する。自分だけじゃない。


 あれこれ見て歩いていると、安売りのワゴンに出会う。もう手にたくさん紙袋を持っている今、中を掻き混ぜる情熱は持てずに、さらっと表面だけ眺める。そして、どうせセール用に安く仕入れたものなのだから、そんなに大層なものは入っていないだろうと頭の中で結論付ける。おそらく友人たちも同じように考えているのだろう。ちょっと待って、なんてじっくり検討する人はいない。

 セール用に安く仕入れたからって、悪いものだとは限らない。中には確かに掘り出し物があると、用途は違えどアパレルを扱っている美優は、知っている。知っていても、敢えてチェックはしない。どれが中途半端な商品でどれが掘り出し物かと見定めるのは、億劫なのだ。


 セール用に揃えても、売れ残ったら当然赤字だ。身体はひとつなのだから、防寒着を二枚重ねて着る人はいない。買い換えたり買い増したりするのは、実用的な理由の外に欲しいからってオプションがつく。ファッションビルの初売りみたいに商品の捌けない伊佐治で新しく出物を仕入れてしまえば、カーゴパンツの二の舞になる。

 それよりも邪魔にならずに枚数が必要なものを、紹介すればいい。安価でなくても、試してみようかなって商品を少しだけ値引きして売れば、口コミで広げてもらえるかも。

 元旦の思いつきにしてはあんまりな発想である。色気のないこと甚だしく、前日のトキメキはどこ行ったって感じだが、生活は常に同時進行だ。


 呑気に正月三日を過ごしてしまえば、冬休みは残り一日。鉄からのお誘いは来なかったなと思いながら自分から呼び出すこともできず、やけに中途半端だ。外には少し雨が降っていて、翌日の仕事始めは自転車出勤できないかなと憂鬱になる。雨の中を延々と歩くのは、気が重い。歩くことを考えれば雪のほうが始末が良いような気もするのだが、その翌日を考えれば凍った道を自転車で走るのは……

 ヒマ。誰かからメッセ来ないかな。スマートフォンに視線を走らせると、タイムリーに着信音が鳴った。


 本当は、口許を緩めてしまいたいほど嬉しい。来ないかなと思っていた人からのメッセは自分の気持ちを見透かしたみたいで、つい浮かれたくなる。

 ヒマ、と一言だけの言葉が画面に浮かぶ。私も、と返事しようとして考える。なんか待ち侘びてたみたいで、ダボハゼっぽくない? 他の人にもメッセ入れてるんじゃないの? だから間髪入れずにじゃなくて、五分ほど置いてから返事した。五分くらいのタイムラグは、普通なら遅いとは責められない時間だ。

 だから? と返した。ヒマだよな、ともう一度返事があった。


 お茶でも飲みに誘ってくれればいいのにな、なんて思いながら、簡単な言葉のやりとりは終わってしまう。気軽な友達のつもりでいるなら自分から誘えばいいのに、美優にはそれもできない。うじうじしている自分がとてもイヤなのに、アクションが起こせない。

 どうしたらいいのか、わかんないの。自分から動いて今の関係を壊すくらいなら、逆にこのままでいいような気がする。



 ぶすったれてても翌日は来る。しとしとする雨の中を歩き、出社して年始の挨拶をする。

「あけましておめでとうございます!」

 少しずつ顔馴染みになってきた客が、にこやかに今年もよろしくと返事してくれる。こんな風に客と触れ合うことは、嫌いじゃない。自分の立ち位置をしっかり確保している気がする。

「あ、美優ちゃん。今日から売り出し準備ね」

 松浦が言葉でざんぶりと美優に水をかぶせ、新年の仕事がはじまる。数日でセール準備をするハードデイズだ、じっくり考えちゃいられない。休みの間にざっくりと考えたプランを松浦に伝え、任せたと後押しされる。良いアイディアだと言ってくれないのは不安だが、とりあえずの了承を取り付けてしまえば先行きの不安が減る。

 大丈夫! 少しだけ先に仕入れるだけで、冬中で捌ける量しか入荷させないから! そう思ってはいても、ふだん数枚ずつしか入荷させないものを十枚単位で発注するのはビクビクだ。メーカーの発注画面を開き、えいやっと発注登録ボタンをクリックする。あとは野となれ!


 おそらく何年も動いていないだろう商品をピックアップし、カタログを開いて現行モデルか否か確認する。現行モデルであるなら上下をセットにするとかサイズを揃えるだけで、また動き出す可能性がある。次の仕入れはモデルを選ぶだけじゃなくて、その辺も考えて調整しようと心に決めるが、新モデルの紹介を受ければまた忘れるだろうな、なんてちらっと思う。忘れないうち、つまり在庫を結構持っていて予算もそれなりにありそうな、今月のうちに行動すれば良いのである。卓上カレンダーに『デッド品を生き返らせる』と赤字で記入したりする。


 それでも可動ハンガー一台分の廃番廃色品を見つけた。その分常設のハンガーが空いてしまうのは、致し方ない。もう飾りでしか用を為さなくなったものを現金に換えれば、次の商品を考えることができる。

 本部に依頼して、思い切って三十パーセントオフのシールを送ってもらうことにした。今回の売出しで売り切れなくても、金額は戻さずに売り切ってしまおうと決めると、気分が楽になった。任せると言われたのだから、考えた通りに進めさせてもらおう。大丈夫、赤字にはならない筈だ。


 展示台をゴトゴトと動かし、会議用の長机を一台貸してもらって、即席の展示スペースを作る。あとは値引きシールと商品を待つだけ……疲れた。

 朝からの雨は上がっているが、駅までの道のりを考えると遠い。誰かまだ冬休みだったら、迎えに来てってSNSで流してみようか。そう思ってスマートフォンを見てから、ひらめく。

 女の子の友達には、ヒマなら迎えに来いって言えるんだもん。てっちゃんが友達認定なら、てっちゃんにそう言っても良くない? いつもてっちゃんが勝手に来て、晩ごはんだのって言ってくるんだもん。一回くらいなら、私から言ってもおかしくないと思うの。


 ドキドキしながらSNSの画面を開き、オレンジ頭のアイコンを選ぶ。迎えに来いとか入力しながら、半分くらいは断って欲しいと思っている。とても変な気分だ。

 間髪入れずに戻った返事は、三十分待ってろと命令形だ。命令形なのはまったくもって構わないのだが、車なら数分の鉄の家から何故三十分なのだろう。着替えてグロスを塗り直し、バッグを抱えて売り場に戻る。タイムカードはもう打刻してしまったから、棚の整理なんかせずにスマートフォンで遊び始めてしまう。


 紺色の作業服上下セットは、汚れていない。胸には早坂興業と白い刺繍があり、左肩には個人名。髪は不自然に黒く、スポーツメーカーのスニーカーは安全靴じゃない。

 誰ですか、これ。

「ごめん。親父置いてくるから、あと十分待っててな」

 二階に走り上がって来た速度で階段を降りて行った人を、ぼんやり目で追っていた。超超ロングじゃない作業服、持ってたのか。じゃなくって、もしかして仕事だった?

 店の前で鉄を待つために、美優も階段を降りた。


 待つほどの時間もなく、鉄の(正確に言えば鉄の父親の)車が駐車場に入って来た。

「ごめん、仕事だった?」

 助手席のドアを開けながら、質問する。

「運転手。今日はそっちこっちに名刺配りの日だから、親父は昼間からビールなんか出されちゃって」

「ふうん。髪、染めたの?」

「いや、でかい会社だとオレンジはまずいってんで、ムースで色着けただけ。汗かくと黒い水が流れる」

 年始回りの付き添いじゃ、鳶服ってわけにいかないだろう。美優には違和感ありありの服装だが、鳶服を威圧的だと捉える人がいることを考えれば、作業ジャンパーにストレートパンツは妥当だ。

「早坂興業で、そんなユニフォームあったんだ……」

 美優は手配していない、つまりどこかで作ったのか。

「いや、親父と内勤やってる人だけ持ってるの。これは親父のやつ。苗字が一緒だからな」

 確かに苗字は一緒だ。そうか、数枚ならどこで作ろうが気にならないななんて思ってしまうところが、まだ仕事モードである。


「メシ、軽くでいい? 正月の残りがまだ山ほどあって、家でも食わないとなんないんだわ」

 なんだか前日のヒマだっていうメッセで、すっかり鉄が時間を持て余している気分になっていた。駅まで歩くのが億劫だってだけで、仕事していた人を呼び出してしまった。

「ごめんっ! 駅まで歩きたくなかっただけで、てっちゃんがヒマだったら、くらいの感じで」

 忙しいなら忙しいと断ってくれれば良かったのだ。軽く返事してくれちゃうから、大丈夫なものだと思っていたのに。

「俺に会いたかったんでしょ? 照れんなよ」

「誰がそんなことっ!」

 こっち向くなこっち向くな。すっごい赤面しちゃってる!

「ツンデレなくていいって」

「ツンした記憶もデレた記憶もないよっ」

 こんなのはただの言葉遊びだ。動揺するようなものじゃない。それなのに、泣きそう。


「ごはんじゃなくて、お茶でいい」

「あ、そう? じゃあさ、ユカがコーヒー旨いって言ってたとこ行こうか」

 ナチュラルに他の女の子を名前呼びだ。ってことは、みーなんて呼ぶのも、美優を特別扱いしていたわけじゃないのか。

 自分が特別扱いじゃないって自覚しないと、てっちゃんの幅広い交友の中に紛れちゃう! 私は違うんだよってちゃんとアプローチしなきゃ! でも、どうやって。

 店の売出しの内容は思いつき即実行だった。それなのに、何をどうやってアプローチすれば良いのかすら、考えつかない。自分の美点を見せるのだったって、そもそも美点はどこだ。自分がそんなに煮え切らない人間だったかと、そちらの方向でがっくりする。普通程度に可愛いとか普通程度に話が合うとかじゃ、全然ダメ!


 向かい合わせでコーヒーを頼んで、ふと鉄と目が合った。黒い髪が見慣れなくて、強烈な違和感だ。鉄もそれが気になるらしく、しきりに前髪を手で持ち上げる。

「なんかね、てっちゃんじゃないみたい」

「自分でもヘン。トイレで鏡見ると、誰だこいつって感じ」

 照れくさそうな顔が、とても新鮮だ。

「オレンジの髪が見慣れちゃってるからかも知れないけど、そっちの方が似合う気がする」

 髪にヤンチャな色がついていれば、アクティブには見える。けれどネイビーの作業服を着て黒い髪の鉄は、やけに大人びている。その分頼り甲斐がありそうに。

「おっさんくさくない?」

 鉄の質問に、首を振る。

「落ち着いたお兄さんって感じで、かっこいいよ」

 かっこいいとか似合うとかって言葉は、接客にもよく使う。だから口から出すのに抵抗はない。会話の中になら、平気で組み込んでしまえる。


「マジ? オレンジ飽きて来ちゃったし、色変えようかなあって思ってたんだよな」

 鉄の食いつくキーワードが、そこにあるとは思っていなかった。結構何度も聞かされていたにも拘らず、頭に残っていなかったのだ。

「でも服の色とか、みんなオレンジに合わせちゃってあるしなぁ。みー、どう思う?」

 どう思うと訊かれても、答えようがないではないか。

「買い直せば? 早坂興業さんの特価で見積るから」

 売上が絡んでしまうと、信憑性がなくなるじゃないか。職業上のこととはいえ、これは素直に受け取ってもらえない。他人の金だと思ってと笑う鉄も、冗談にしてしまっている。本音なんだけどなあと、美優は内側で溜息を吐いた。


 車で送ってもらいながら、自分の一番の売り物は何だろうと美優は考えていた。鉄により強くアプローチできて、外の女の子と差別化できるものは何だ。

 伊佐治でのアルバイトは成り行きだったし、そこで鉄と知り合ったのは単なる偶然だ。鉄の面倒見の良さと気さくさに巻き込まれる形で仲良くなって、ここまで来た。それだけで特別扱いされてるみたいなつもりになって。

 売り出さなくちゃ。何が得意で何ができるのか、私と仲が良ければ物理的じゃない部分でのメリットは何なのか、てっちゃんに売らなくちゃならない。考えろ、美優!

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